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想い
男子バイトの仕事は調理場で食器洗ったり運んだり、掃除やゴミ捨てなど。
身体も大きく体力に自信のある春翔にとって何も問題は無かった。
春翔より大きい泉は勿論、性格の軽そうな拓も身体つきはガッチリしており、フリーター3人組の高田、井口、滝井は体力だけが取り柄のタイプ。
色白で身体の線も細い悠を見ていると、場違いな感じが拭えない。
朝のバイト時間が終わる頃、悠が重い生ゴミの袋を外に運び出そうとしていた。春翔は自分が行こうかと思ったが、力を入れて持ち上げた食器が詰まったコンテナを、また降ろす事に瞬間躊躇った隙に、泉がさっと悠の持つ生ゴミを取り上げる。
「こんなの俺がするから。悠さん拭き掃除して」
泉の言葉に悠が微笑み返す。
「ありがと」
春翔は食器の詰まったコンテナを所定場所まで運び、イラつきながらガンと乱暴に置く。コンテナの中で食器がガラガラっと崩れた。
躊躇わず行けば良かった。そうすればあの笑顔は自分に向いていたのに。
「何考えてるんだ俺…」
どうも悠が気にかかって仕方ない。
男の笑顔が見たいとか、マズいだろ俺。
出会った時の白い肌が印象的だったからなのか、同じ学校だからか、声が優しいからなのか、とにかく悠の存在が常に気にかかる。
目の前の海水浴場には大勢の水着ギャル。なのになんで俺は年上の男の事を考えているんだ…。
はあ…とため息をついて、春翔はコンテナの中の崩れた食器を整えなおした。
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