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事件4

拓は追い出されてすぐ春翔に電話をかけるが、応答がない。一度切って次に泉にかけようとした時、ドアの向こうから悠の叫びが聞こえた。 『ひああっいたいっああっ』 泉にかけるがやはり応答がない。 合鍵は従業員管理室に行けばあるが、応援が必要。なんとか2人に連絡取ろうとメッセージの文字を打つ。 その間にも悠の苦しい声が聞こえる。 メッセージを春翔、泉に送信し、拓は合鍵を取りに走った。 春翔と泉は杏と凛と砂浜で過ごし、夜中近くになってホテルに戻った。ゲームコーナーで卓球を始め、拓から着信があった時、春翔も泉も男女ペアのダブルスの試合でラリーの真っ最中。 試合が終わり、春翔はバイブが反応していたスマホを取り出す。 着信もメッセージも拓からだった。 [高田達に悠さん襲われてる、すぐ部屋戻れ] なんだ、これ…。 凍り付くような不安が、春翔の心に広がる。 襲う?襲うって? 高田、あいつらビールを持ってたけど…。 「春翔さんにもメッセージ来てる?これ、どういう事?」 同じくスマホを見た泉の言葉に答えず、春翔は拓からの着信履歴にタップする。その指先が震える。 拓はワンコールで出た。 「春翔さん!?すぐ、すぐ戻って部屋!」 「襲われるってなんだ?」 「高田達が大酒飲んで」 「だから襲われるってどういう事なんだ!?」 ただならない言葉に、泉も杏も凛も春翔を見る。 「そのまんまだよ!殴られて、押さえつけられて、アナル使わせろとか、俺は締め出されて、今、合鍵を取りに…」 春翔は、拓の言葉の後半はもうダッシュしていた。 泉も杏・凛にごめんと言って走り出す。 ゲームコーナーから、バイト部屋へ真夜中のホテルを駆け抜ける。 「春翔さん!」 部屋の前で合鍵を手にした拓と出会う。 部屋に入り、一瞬、世界が時を止めたかのように、身体がフリーズした。 悠が全裸で、腕を縛られ背中にまわされて畳の上に仰向けにされている。 涙を流す悠の顔は明らかに殴られたと思われる赤み、頬の腫れ、白い肌に散らばるキスマークと噛み跡、特に両乳首の周囲は酷く赤い。 なんだこれは…。 身体中の血が沸騰するような、そんな激しい怒りが湧き起こる。 春翔さん!と拓が叫んだ声が廊下から聞こえ、高田達はそのタイミングで悠から離れた。 入って来た春翔、泉、拓が事態を把握出来ずにいるすきに短パンを履く。 「お前ら…」 春翔の声が怒りで震える。 「遅い、春翔さん。もうヤっちゃった」 高田が手に持った使用済みのスキンを、ヒラヒラさせた。 そこからあとは、あまりの怒りに断片的な記憶だ。 高田を殴ろうとしたら悠がやめろと止め、暴力は嫌だと言う。 泉が奴らを今日は帰ってくんなと追い出す。 悠を支えながら風呂に連れて行く時、眠る時、誰もが無口だった。

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