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One night-1
人の身であることをこれほど幸いに思ったことはない。愛する人に精気を分けてあげられるのだから。
「あ……っ、んっ……」
もうダメだ、と言う代わりにセナは股間に埋められたルカの大きな頭に手をやる。すぐにそれは外されて指を組み合うとぎゅっと握りしめられた。血管が浮くほどセナはその手にしがみつき喉を反らして喘いだ。
「うん……もう……あっ」
セナはふと正気に返って唇を噛みしめた。鉄の味が口の中に広がる。身体を硬直させたまま首を何度も振った。
「どうした、セナ」
顔を上げたルカを見ることができず、ぎゅっと瞼を閉じる。
視線を感じる。刺すような冷たい感情が流れてきて、ほてった身体を沈めさせる。セナは足を閉じようとしたがルカの雄々しい身体が割り入れられて首をすくめる。小さな蕾に触れた猛々しい感触にセナは息を飲んだ。
「唇が切れている」
大きな背中に両手を伸ばし抱きつくとセナは顔を隠した。あやすように頭を撫でて髪に触れる。その銀色の髪に隠れる耳の辺りでルカは囁いた。
「……エレナが気になるか?」
そうだ、と言えずセナは息をせわしなく吐いた。
エレナには嫌われている。はっきりと言われたわけではないが一度の会話で歓迎されてはいないと悟った。
「セナ?」
「……あの……」
口ごもるセナを見下ろしルカはひとつため息をついた。
「エレナ」
こちらをじっと凝視している瑠璃色の小さな鳥の首が傾げられた。
「外に出ていなさい」
「……ルカ」
しばらくすると開け放たれている扉から羽ばたきが聞こえて遠くなっていく。セナは慌ててそちらを向いて彼女の名を呼んだ。
「ルカ、あの……」
「エレナが見ているから集中できないのだろう? この間からずっとそうだ。声を押し殺して」
返す言葉も見つからずセナは俯いた。エレナは行為の間中ずっと二人を見ている。最初はただの小鳥だと思って気にも留めずにいた。だが今は違う。彼女は姿を変えてセナに話しかけることができるのだ。しかも心よく思っていないとなれば四六時中気になる。できれば嫌われたくないし、仲良くなりたいとも思う。だが彼女から拒絶のオーラが感じられてぐずぐずとここまで来てしまった。今のルカの言葉にエレナは傷ついたはずだ。どうしよう、と困惑しているといきなりルカの熱い楔が埋め込まれてセナは背を反らした。
「さぁ、最初の頃のように鳴くがよい」
「やぁ……っ、ルカ、あっ、いや、あんっ……!」
身体ごと押し上げられてセナは肩にしがみつく。長い髪が互いに絡んで光っている。白い肌が紅く染まり艶めくように濡れ始めた。芯を緩く擦られて両方からの快感でセナはたまらず声を上げ続ける。
地上から流れる緩い風に真鍮の鳥籠が小さく揺れた。
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