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22.お説教とタンコブはバリューセットで

「はい、そこに正座」 「はい」 放課後。空き教室に志津ちゃんを連れ込んだ。 使用されていない机や椅子は後ろの方に積まれていて、前方にはポッカリといい感じの空間が出来ている。 その床に胡坐をかいて座る俺の前には、正座して座る志津ちゃんが一匹。 いや本当にここまで正座姿が似合わないとは思わなかったけどね。本当に似合わないよ、志津ちゃんの正座姿。 なんていうかこう 「気持ち悪い?」 みたいな。 「気持ち悪いって…、それまさか俺の事?」 敏感に反応した志津ちゃんにハッキリ頷き返せば、溜息を吐いて項垂れた。 あれ、もしかして傷つけた? 「あのね、志津ちゃんが気持ち悪いんじゃないから」 「え、じゃあ何が気持ち悪いって?」 「正座してる志津ちゃん」 「………」 …また項垂れちゃったし…。 どこがダメだったのかサッパリわからない。 まぁいいや。 「本題に入ります」 「うわ、傷ついてる俺は放置!?」 それまで項垂れていた顔をぐわっと上げた志津ちゃんは、にっこり笑う俺を見て、『諦める』というスキルを手に入れたらしい。 チェシャ志津は新しいスキルを覚えた!レベルが1上がった! って感じ? まぁいいや。 「志津ちゃん」 「ん?」 「誰彼かまわず(たぶらか)すのやめようよ」 「………」 そこで何故俺を凝視する、志津奏。 おまけになんだか嬉しそうだし。その期待の眼差しはなんですか。 「…なに。なんでそんなに俺の事見るわけ?」 「いや…、どういうつもりで愛唯さんがそんな事言ったのかな…って」 「どういうつもりも、こういうつもりも…」 「………」 「四葉君に頼まれたから」 「はぁ!?」 お。志津ちゃんが固まった。 いったい何を想像してるのか…、顔が徐々に青褪めていく。 おまけに、 「なんで四葉さんが俺の事…、っていうか、何かの間違いなんじゃ…」 そんな意味不明な事をブツブツ呟いている。大丈夫なのかな、この子。 途中で、嫉妬がどうとかこうとか…妙な言葉が聞えてきたけど、どういう方向へ思考回路が飛んでいってしまったのか全くわからない。 「なんかさ~、四葉君のクラスメイトが志津ちゃんに弄ばれたーって泣き喚いてて、凄く鬱陶しいんだって。だから、志津ちゃんのホストっぷりをどうにかしろって四葉君に泣きつかれた」 「………あぁ…なんだ、そういう事…」 志津ちゃんの声のトーンが一気に落ちた。さっきとは凄い違いだな、おい。 「なんだと思ったわけ?」 「いや…、愛唯さんが嫉妬してくれたのかな、と」 「は?嫉妬?俺が?誰に?なんで?」 「………もういいです。俺が間違ってました」 あ~ぁ、なんか涙を拭く真似してるし…、今日の志津ちゃんの反応はいまいち読めない。俺の勘もちょっと鈍ったか? 首を傾げてそんな志津ちゃんを見ていると、突然、 「可愛そうな後輩を慰めて!」 とか訳のわからない事を口走って、いきなり正面から抱きついてきた。 「痛ッ」 俺、胡坐。志津ちゃん、正座。 その状態で正面から飛びかかられたらどうなると思いますか? そうですよ、俺は後ろにぶっ倒れますよ。ゴツって鳴ったの、俺の後頭部で間違いないよね? これたぶん、へこんだ後に膨らむよね。まさに凹凸。 仰向けになって転がった俺の上に圧し掛かっている志津ちゃんの頭を撫でながら、人生の厳しさというものを実感してしまった。 あぁ、人生の厳しさって何かって? 一寸先には後頭部にタンコブを作るような出来事が起こる未来の事だよ。

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