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ありがちなレクイエム 3 ※
「小牧原さん…」
小牧原が逃げないよう抱き締める力を強めた。小牧原は抵抗しない。
小牧原は妹を亡くした姉や本多に慎みながら控えめに接していた。妹の死のことばかり考え、本多の中に小牧原を置く余地はなかった。小牧原に妹が産まれたことを知るまでは。そこからはもう思い出したくはなかった。小牧原の唇に唇を近付け、一度躊躇ったが、だがそのまま唇が触れた。胸に収めたまま押し倒す。
「っぁ…んンっぁ、ふ…」
両手を取って指を絡める。シーツに押し付け、小牧原の口内を漁る。甘さに脳が溶けていく。
妹が産まれた小牧原を詰った。殴りつけて喚いた。裏切り者と罵った。まだ幼かった。どのように子ができ、そこに小牧原の意思があるのか否かも理解していなかった。
「…っ、はぁ」
「あッ…っ、くンっ」
逃げようとする掌を逃さず、シーツへ縫い止めたまま。飲み込みきれない2人の唾液が小牧原の小さな口角から溢れ出る。漏れ聞こえる嬌声がさらに熱を加速させていく。こく、と嚥下する振動が伝う。
小牧原とはその喧嘩、一方的な本多の暴行を境に接触する機会が減った。姉は変わらず小牧原と仲が良かったけれど、それも成長に変わっていた。
「ぁ…っぁ…もぉ…はァ」
足りない。簡単なことだった。一言謝ればよかった。許されなくても。だがそう出来なかった。それどころか忘れていた。逸らされそうになる顔を追う。力を失った舌が本多によって遊ばれる。薄い胸と小さな胸が豊かなフリルを挟んで擦り合わせされる。放さない。もう放さない。人の好い姉はこの根暗な男をどう思っているか分からないが、姉がこの男を受け入れるのもこの男が姉を選ぼうとしているのも気に入らない。絡めた指が痛いほど握られ、唇を離す。とろんとした双眸が本多を向いているくせどこも見てはいない。
「小牧原さん…」
口の端を滴る蜜を舐め上げる。小牧原も無意識か、赤く染まった舌を覗かせ溢れた2人の唾液を舐めとる。肩で息をしている小さな身体を放したくない。
「あの時のことは、本当にすみませんでした」
火照った小さな顔の中の大きな瞳が本多を見る。
「お、おれおれおれ、礼信くんのことぜ、ぜんぜ、全然怒ってな、ない…おれ、おれのほ、ほうこそ、ごめ、なさ…」
「なんであなたが謝るんですか。……あれは僕が悪かったんです、完全な八つ当たりでした」
「……やく、や、約束破ったのに…?」
破られた約束などあったかと、思い出したくはない記憶を辿る。
「おに、お人形さんの、衣装…あれ、あれのこ、あれのこと、怒って…」
「いつの話、してるんですか」
小牧原の潤んだ瞳が穏やかに閉ざされる。
「礼信 く…ん」
「もう姉のこと想うのはやめてください。僕のこと考えてください」
覆い被さると小牧原は目を開く。見つめ合う。
「な、なん、なんで?や、やややっぱり、おこ、怒って…、」
「妬くからです」
小牧原の胸を撫で回す。掌に時折当たる突起。
「ご、ごめごめごめ…なさい…礼那さんでへ、へへ、変な妄想してごごごごめ、ごめ…なさ…」
本多は顔を顰める。小さな実を摘んだ。息を飲む声が聞こえる。周りを揉み込みながら指を回すと声が漏れる。
「こんなえっちなおっぱいしておいて姉を抱きたいんですか」
「ち、ちがっ、」
「違わないです」
固くなっている突起を捏ね、反対も舐めてから舌で押す。
「ァあンっ、おんなの、女のコになる、想像する、のっ…ッああ、」
「え、」
顔を腕で隠される。音を立てて吸っていた肌を放し、顔を上げる。
「おん、おんなの、女のコになっていっぱい、れ、礼那さ、礼那さんにい、いぢめ、いぢめてもらっ…」
頭を掻く。言われたままをイメージするには想像力が足らなかった。
「意味が分かりません」
脚をもじもじとさせながら、顔を赤らめ小牧原は顔を反らす。
「れ、れ、礼那さんに女のコにな、なったお、おれ、おれのあそこ、いぢめられるのそうぞ、想像してオナ、ニーしちゃ、うの…」
詳しく聞こうとしたつもりはなかった。根掘り葉掘り訊いてはまずいものと判断していた。だが小牧原は羞恥に身を震わせながらそう説明する。小牧原の性生活には興味があったが虚構であれ姉が絡んでいるとなれば話は変わってくる。
「もしかして興奮してます?」
独立した生き物のようにぴくぴく動く下半身の茎に触れた。
「だだだだって、礼信くん…」
小牧原の目が泳ぐ。本多をちらりちらりと見ながら気まずそうに逸らされる。視界に入る人工髪が邪魔で耳にかけた瞬間に言いたいことに気付いて、本多は意地悪く笑った。
「なるほど。姉さんに似てますもんね、僕」
それから出来るだけ姉を意識して口角を上げる。小牧原が呆けて本多を見上げた。張り詰めている前を撫で回す。小牧原を起き上がらせ、手を取る。小牧原自身にその手を導き、フリルに隠れた手を重ね、上下に動かす。
「あっ、そ、そそそんなッ…」
声を発さずにこりと笑う。本多は自分の声がどう聞こえているのか、どれほどの幅があるのかを理解していなかったが、姉の鈴の鳴るような軽やかで高い声は裏声を使ったとしても出せないだろうことは分かっていた。
「ぁ、っァあ、み、みみ見ないで、見ないで…っァァっ」
すでに本多は小牧原に重ねた手の力は抜いていた。だが小牧原の愛らしい肉幹の上を滑っている。鼻先に触れそうになるほど顔を近付け、小牧原を見つめる。姉がよくやる表情を浮かべると、突然小牧原の下肢が大きく波打った。
「っあ、…っおちんちんでイっちゃう、うううう、あッ」
弾け、吹き出したものが本多の顔を汚す。量は少ないが肌を伝っていくくすぐったさも忘れ、吐精の余韻に浸る顔を暫く眺めた。指で拭って、脈動する小さな肉竿に塗り付ける。
「ごっ…めなさ…おちんちで…イっ…ァァっ」
油断している姿にまた姉のする微笑を浮かべたあと、止めていた手を動かす。小さく上がる悲鳴が心地良い。片手を動かし、片手で先端を撫で回す。掌の窪みで擦り付けると小牧原はがくがくと身体を震わせる。大きく揺れて、先端部が弾け、果汁が飛び散る。
「はひっ…あぁぅッ、あひ、」
痙攣しながら小牧原は虚ろな目をして涎を垂らす。
「れ、礼信くッ、も…もぉやめ…ぇ」
「僕が本当に、女のコにします、あなたを」
「あ…ああ…れ、礼那さ…」
妖しい光を帯びた小牧原が本多に手を伸ばした。
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