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第8話
「さて、澪様
早速ではありますが……ノーザンを見て頂いても?」
「あ、はい……」
はしゃいでいる聡をどう落ち着かせるかで頭がいっぱいだった僕は、本来の目的を忘れそうになっていた
ノーザンに触れられれば戦に行かなきゃ行けない
逆に触れられなければ元の世界に戻れる…………
家に帰ったら何しようかな〜……と呑気に考え事をしながらお姫様の後ろをついて行った
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「す、すごい………………」
「どうです?かっこいいでしょ?」
いや、カッコイイのもそうなんだが………………
明らかに誰かの墓に刺さっているその剣は、3mあるんじゃないか、というくらい大きくとても重たそうだった………………
(ってか、人様のお墓に刺さってる剣抜いちゃだめだろ………………)
と、今から自分がしなければならないことが明らかに罰当たりでしかないような気がして冷や汗が止まらない
剣を深刻そうな顔をして見つめる僕に対し、お姫様は……………………
「大丈夫ですよ!不安に思うことはありません!
あなたはアーサー様の血を継いでるのです!
きっと抜けます!あの墓から!
大丈夫です!だからそんな緊張しないで?ね?」
いやそこは不安に思ってねぇよ!
と心の中でお姫様につっこむ
抜くかどうかは今どうでもいいんだ………………
ただ、お墓の主に怒られそうで、とても罰当たりな気がして、不安なんだ!
だって、絶対宝物だろ!この人の!
お墓に刺さってるんだよ!?絶対宝物じゃん!!家宝レベルだよ!?きっと!!
(あぁ……頼むから、ほんと悪気はないから……
まじで許して欲しい、大丈夫、ガッツリ触らないから…………チョンって触るだけで帰るから………………)
と心の中でお墓の主に土下座しながら恐る恐る手を伸ばし、剣に触れる……………………人差し指でチョンっと………………
すると、絶対なにか仕掛けただろ!と思うくらい簡単にその剣はドォーン!と大きな音を立てながら横に倒れた
「………………」
「………………」
呆気なく倒れた剣を2人で見つめ呆然とする
…………え、こんな簡単に抜けていいものなの?……と、絶対思っているお姫様
だって、顔にそう書いてあるもん、は?っていう顔してるもん
“呆然”という文字が似合うくらいボーっとしているお姫様が、はっ!とやっと気づいたかのように僕に向き直り、引きつった笑みを浮かべながら僕へお祝いの言葉?を言った
「み、澪様!やりましたね!!
見事抜けましたー!!」
「……………………まじかよ…………」
どんなコントだよ!っていうくらい呆気なく倒れた剣を睨みつけながらため息をはく
これで僕が元の世界には暫く帰れないことが決定した
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