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3-F

「もしもし、森保君?」 「……」 「…昨日は、ごめん」 「……」 電話ごしの俺の謝罪と無言の森保君。 只今、午後10時15分。 やっぱり怒ってる。 スマホの『もりやすくん』と対峙して約15分。 なんとか電話での謝罪というミッションを果たしたが、森保君は無言のまま。 でも、ワンコールで出てくれた。 とにかく、ちゃんと謝まって、ちゃんと仲直りだ。 「森保君、昨日は妹と間違えてごめん。妹は『なぎさ』って名前で、いつも"なっちゃん"って呼んでて」 「……」 「電話だと家って感覚が強くて、決して森保君を子ども扱いしたわけじゃないんだ。ホント、ごめん」 「……」 全然、返事をしてくれない。 そんなに甘くないようだ。 せっかく仲良くなれたのに。 やっぱり友人Aがいいとこか。 いや、生徒Bに逆戻りか。 「それじゃ…」 「切るな、三島!」 慌てた森保君の声が耳に響いた。 「三島は悪くねー。俺が勝手に腹立てただけだ。俺の方こそ、…ごめん」 森保君が、何故か俺に謝っている? 「え、あ、でも、あんな子どもに言うような」 「俺、まだガキだから。…ガキだから"なっちゃん"が気になった」 「……」 森保君、ウチの"なっちゃん"まだ小学生なんだけど。 確かに、"なっちゃん"は超絶可愛いけど。 森保君が、まさかのロリコン…。 ちょっと、いや、だいぶショックです。 あ、でも妹ととしか言ってないから、歳は知らないのか。 「森保君、あのー、ウチの"なっちゃん"はまだ小学生ですが」 「……」 「確かに、ウチの"なっちゃん"は、贔屓目に見てもカワ」 「…三島、そういう意味の気になったじゃねーよ」 違うのですか? じゃあ… 「あと、言っとくけど、俺はロリコンじゃねーぞ」 「え、なんで俺が考えてること分かったの?!」 「やっぱりか」 「…重ね重ね、ごめん」 「いいよ、別に」 電話ごしでも分かる。 今、森保君笑ってる。 俺も、自然と笑顔になる。へへっ。 「それに、別に子ども扱いされても構わない」 「ん?」 「だから、俺と話すときも、その"なっちゃん"に話しかける感じで構わない」 「……」 んん?? えっーと、それって…。 「森保君って、甘えたさん?」 ナント、主人公は甘えたさんの不良だった!?……の巻。

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