「もしもし、森保君？」 「……」 「…昨日は、ごめん」 「……」 電話ごしに俺に謝罪する三島。 只今、午後10時15分。 気まぐれ猫からの電話に動揺を隠せない。 スマホに『三島藤』の表示。 電話をかけようとスマホを持ったものの、何をどう話せばいいか思いあぐねていた。 そこに、三島からの電話。 思わず通話ボタンをタップしていた。 「森保君、昨日は妹と間違えて。妹は『なぎさ』って名前で、いつも"なっちゃん"って呼んでて」 「……」 「電話だと家って感覚が強くて、決して森保君を子ども扱いしたわけじゃないんだ。ホント、ごめん」 「……」 何故、三島が謝る。 俺が勝手にイラついただけだ。 ただ、俺がイラついてるのはソコじゃねーけど。 「それじゃ…」 「切るな、三島！」 電話を切ろうとした三島を慌てて引き止める。 「三島は悪くねー。俺が勝手に腹立てただけだ。俺の方こそ、…ごめん」 「え、あ、でも、あんな子どもに言うような」 「俺、まだガキだから。…ガキだから"なっちゃん"が気になった」 「……」 三島が優しく呼ぶ"なっちゃん"が。 「森保君、あのー、ウチの"なっちゃん"はまだ小学生ですが」 オイ。 「確かに、ウチの"なっちゃん"は、贔屓目に見てもカワ」 「…三島、そういう意味の気になったじゃねーよ」 「？」 「あと、言っとくけど、俺はロリコンじゃねーぞ」 「え、なんで俺が考えてること分かったの？！」 「やっぱりか」 「…重ね重ね、ごめん」 「いいよ、別に」 鈍感な三島にホッとする。 ただ、それはそれでモヤっとする。 だから、 「それに、別に子ども扱いされても構わない」 「ん？」 「だから、俺と話すときも、その"なっちゃん"に話しかける感じで構わない」 「……」 もっと俺に懐いてくれ。 「森保君って、甘えたさん？」 小首を傾げながら言う三島が目に浮かぶ。 ナ、ナンダその"甘えたさん"って…。 気まぐれ猫、実は無自覚にゃんこ！？……の巻。