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4-S

「あのー、森保君…」 「んー」 「俺も、"モリー"って呼んでい?」 「却下」 三島の提案を即答で断った。 只今、午後10時55分。 その距離の詰め方はナシだ。 事の発端は、吉川の何気ないひと言。 「みっちゃんって、モリーと仲良いいのに"森保君"って堅いよねー」 良いんだよソレで。 ダチは、俺の事を"モリー"と呼ぶ。 三島だけ、俺の事を"森保君"と呼ぶ。 「何で"森保君"呼びなの?」 三島は、今までの俺の周囲には全くいなかったタイプの人間。いや、猫か。 俺も、ここまで気に入るとは思わなかった。 たぶん三島は、言い換えるタイミング逃したんだと思う。 「ごめん、もしかして俺の"みっちゃん"呼びって馴れ馴れしかった?」 最初っから三島に距離感ゼロだったイケメン王子・吉川。 逆に、オマエの"みっちゃん"呼び、羨ましわ。 「呼び方だけで距離が縮まる感あるしね。仲良くなりたいのに、堅苦しいの嫌だし」 三島とは、最初に比べたらかなり距離は縮まっている。だいぶ懐いてくれた。 三島だけが呼ぶ"森保君"に、俺は満足していた。 ただ、もっと近くなりたい。 「いつも俺と仲良くしてくれてるみっちゃんには…。ハイ、チョコあげる!」 気まぐれ猫を甘やかす王子様よりも、もっと近くありたい。

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