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6-F

「三島、俺のこと"森保君"じゃなくて、"佐久間"って呼んで」 「ひぇ?」 名前呼びを提案した森保君にすっとんきょうな声を出した俺。 只今、午後10時25分。 えーっと、えーっと、どういうことですか?? 今日、学校で、森保君のこと無視したのが、ずーっとずーっと気になって気になって。 森保君は気にしてなかったようだったけど。 だから、いつもの森保君からの電話に出て、結局謝るっていう。 それで、またいつも通りな感じで話せるかと思っていたら…。 「なぁー三島、"佐久間"って呼んでみて」 「……」 いつも通りどころか、コレは夢!? 名前呼びって…えーーーっ!! 「やっぱ、ダメ?」 えーーーっ!! ナニ、ナニ、甘えた森保君発動!? ちょ、ギャップ萌えが過ぎるんですけどーーー!! 「無理なら」 「ちょーーーっと待ったーーー!!」 提案を取り下げようとした森保君を、かぶり気味で止めた俺。 「…三島、耳がイテー」 「あ、あ、ごめんごめん!」 慌てて止めたから、声が大きくなってしまった。 ホント、ごめん森保君。 「で、何が『ちょっと待った』なんだ?」 「う"っ」 「なぁ三島?」 この感じは、…ちょいワル森保君が発動された。 森保君、飴と鞭の使い分けが完璧です。 「えーっと、森保君ではなくて…。名前呼び…という件について、です…」 「なーに、畏まってんだよ」 そして森保君は、ニヒルに笑ってるんだろうなぁ。 そんな森保君も、格好良いんだろうなぁ。 電話だと喋りやすいけど…。 最近は、顔見えないのが少し残念と思うようになってきた。 そうこう考えていたら、 「藤、俺のこと"佐久間"って呼んで」 えっ。 「藤、呼んでみて"佐久間"って」 森保君、その声で俺の名前呼ぶの反則です。

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