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6-S
「三島、俺のこと"森保君"じゃなくて、"佐久間"って呼んで」
「ひぇ?」
名前呼びを提案した俺にすっとんきょうな声を出した三島。
只今、午後10時25分。
気まぐれ猫よ、どうせなら「にゃー」と言え。
学校で、三島は終始俺のことを無視していた。ただ、終始ソワソワもしてた。
そんな三島の無視だから、全くもって気にならなかった。
だから、いつも通り電話をした。
そしたら、開口一番に謝ってきた。
三島、謝ってばっかだな。
謝ってほしい訳じゃないんだけどなぁー。
「なぁー三島、"佐久間"って呼んでみて」
俺は、名前で呼んで欲しいんだよ。
「……」
三島も、別に"モリー"にこだわっていた訳じゃないんだろ?
"森保君"って呼ぶのが嫌だったんだろ?
「やっぱ、ダメ?」
"なっちゃん"がいるからか、何気に甘えられると弱いんだよなぁ三島。
「無理なら」
「ちょーーーっと待ったーーー!!」
少し引いてみたら、すげー勢いで食いついてきたなぁ三島。
「…三島、耳がイテー」
「あ、あ、ごめんごめん!」
また、謝ってる。
そうじゃないだろう。
「で、何が『ちょっと待った』なんだ?」
「う"っ」
「なぁ三島?」
押しにも弱いよなぁ三島。
「えーっと、森保君ではなくて…。名前呼び…という件について、です…」
「なーに、畏まってんだよ」
食らいついてきた割には歯切れが悪いぞ。
ただ、そんな三島だから言って欲しい。
電話だとちゃんと伝わってんのか分かんねー。
いつも思う、顔が見えたらなぁと。
だから、
「藤、俺のこと"佐久間"って呼んで」
俺の小さな不満を解消してくれないか?
「藤、呼んでみて"佐久間"って」
藤、甘い優しい声で俺の名前を呼んでくれ。
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