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7-F②
「えっ」
森保君の声で、自分の心の声が溢れ出てしまっていた事に気付いた。
「あ、いや、えっと、ごめん。森保君じゃなくて佐久間だよね!」
またも慌てて訂正する俺に、
「…今のはいい」
森保君が囁く。
いつもの森保君とは違う大人びた声色に、綺麗な『森保佐久間』の大人びた微笑が目に浮んだ。
どこかで思っていたんだ。
森保君は自分とは違う世界の人種なんだと。
だけど、それでも君と一緒にいたいと思う自分がいた。
だから、呼びたかったんだ。
森保君がいる世界の言葉で、森保君を。
そしたら、別の世界の俺も、君と一緒にいれるんじゃないかと。
でも、そうじゃなかった。
森保君の世界じゃない。
俺の方の世界でもない。
森保君と俺だけ…。
だったらちゃんと呼びたい。
ふたりだけなんだから。
「ううん、佐久間ってちゃんと呼ばせて」
みんなと一緒のときは、その他大勢でもいい。
けど、ふたりのときは、佐久間の親友がいい。
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