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11-F
「わーい、またわたしのかちー!」
「ホント、なっちゃん強いなー!」
キャキャと笑うなっちゃんとババ抜きに連敗するも笑顔の佐久間。
只今、午後5時22分。
天使と戯れるイケメン…。
写メ撮りたいんですけどーーー!!
手洗いうがいをしてリビングへ行くと、
「おかえり、ふーちゃんと…」
「もりやすクンだよ!」
「森保君ね。初めまして森保君。藤の母のエリカです。いつも息子がお世話になます」
キッチンから顔を覗かせ、母が佐久間を歓迎する。
「初めまして、森保佐久間です。こちらこそ、いつも三島君にお世話になってます」
好青年継続中の佐久間。
いつもと違いすぎる佐久間。
「もりやすクン、トランプしよ!トランプ!」
早速、最近ハマっているトランプを出してきたなっちゃん。
あぁー、ここからが長いなぁ…。
******************
トランプ開始から約1時間。
特にババ抜きは、誰かの歌詞じゃないけど、エンドレス&リピート。
俺は早々に離脱していた。
たぶん20回以上している。
それでも、なっちゃんの相手をしてくれる佐久間。
あんまり甘やかすと、なっちゃん寝るまでトランプするよ。
そう思っているとお母さんが、
「森保君、夕飯はウチで食べてく?」
とまさかの夕食のお誘い!?
「え、いんですか?」
そして、佐久間もノリ気!?
「もちろん!あ、明日は土曜だから、良かったら泊まってく?」
「ちょ、おかーさん!」
母の"ガンガンいこうぜ"に、息子は気が気じゃない!
「わーい、もりやすクンおとまりー!」
逆に、娘はその気じゃないか!
「二人とも、佐久間の都合もあるから!ね、佐久間?!」
そうだよ、まず佐久間が良いって言わないよ。
「ん?俺は別に明日の予定ないし。なっちゃんともまだ遊びたいから、お言葉に甘えて泊まりたいけど?」
良いって言うんかーーーい!
「じゃあ、布団と着替えの用意しとくから。ふーちゃん、後はよろしくね」
「えっ、お母さん?」
「ふーちゃん言ってたでしょ、お母さん今日夜勤だって。用意したら病院行くから」
えーっ!急にまるなげぇ〜!
「んー、着替えはふーちゃんのだと小さいから、カズのを出して……」
独り言を言いながら、リビングを出ていった。
「ってか、佐久間ホント泊まって大丈夫?家の人とかいいの?」
「あー、大丈夫大丈夫。連絡入れとけば大丈夫。あ、そうだ、なっちゃん!一緒にお風呂入ろっか?」
「うん!!さっくんといっしょに入るーーー!」
んん??
「さ、さっくん?」
「さっき、藤が俺のこと"佐久間"って言ったろ?」
あ、そういえば、言った…かも。
「だから、なっちゃんも俺の事"森保君"じゃなくて…」
「わたしも、さっくんってよぶー!そして、さっくんとおふろ入るー!」
「さっくんも、なっちゃんとお風呂入るー!」
な、何なんだ、この天使とイケメン…。
じゃれて抱きつき合ってるし…。
ホント、俺、何一人で焦ってたんだろ。
ってか、何ほっぺたくっつけ合ってんの!
「ねーねー、ふーちゃんもいっしょに、おふろ入いる?」
なっ!?
「な、なっちゃん、我が家のお風呂、そ、そんな広くないよ?三人も一緒に入れないよ?」
「んー、そっかぁ…。みんなで入りたかったなぁ…。」
そうだよ。三人じゃ入れないよ。
ってか、なっちゃん、お兄ちゃんはまだ佐久間とお風呂入るの許してないよ。
すると、佐久間が急に俺の方をジッと見て、男前な顔をニヤリとさせて言った。
「残念だねー」
…ざんねん?
「みんなでお風呂入りたかったねー、なっちゃん」
「ねー、さっくん」
佐久間も俺と一緒にお風呂入りたかった、の?
いつもと違いすぎる佐久間に、ただただ戸惑うばかり。
「ふーちゃん、佐久間君の着替え脱衣所に用意しといたから。佐久間君、服は夫のになって申し訳ないんだけど、サイズは大丈夫だと思うから」
「いえいえ!ありがとうございます」
用意が終ってリビングに戻ってきた母。
何気に、お母さんも佐久間君って言ってるし。
「お布団は三人分、客間に用意したからー。じゃぁ、お母さん言ってくるから」
「お母さん、いってらっしゃーい」
「お仕事、気をつけて行ってきてください」
「佐久間君ありがと。それじゃ、いってきまーす!」
馴染みすぎてる佐久間。
そして…、
「お風呂は三人で入れないけど、寝るのは三人で寝ようねー、なっちゃん」
本日の佐久間は、紳士のち少年、所により一時色男になるでしょう。
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