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11-S

「わーい、またわたしのかちー!」 「ホント、なっちゃん強いなー!」 キャキャと笑うなっちゃんとババ抜きに連敗する俺。 只今、午後5時22分。 天使すぎるなっちゃんによる、悪魔の所業のようなひたすらババ抜き。 さすが藤の妹だ。 手洗いうがいをしてリビングへ向かうと、 「おかえり、ふーちゃんと…」 「もりやすクンだよ!」 「森保君ね。初めまして森保君。藤の母のエリカです。いつも息子がお世話になます」 キッチンから顔を覗かせた藤母。 「初めまして、森保佐久間です。こちらこそ、いつも三島君にお世話になってます」 ここも、押さえておきたいポイントなので、笑顔で挨拶。 「もりやすクン、トランプしよ!トランプ!」 早速、トランプを持ってきたなっちゃん。 先ずは周囲からだな。 ***************** トランプ開始から約1時間。 ババ抜きのエンドレス&リピート。 たぶん20回以上している。 それでも、なっちゃんは飽きずにババ抜きを要求。 そろそろ、神経衰弱とか七並べとか、他のゲームにしないかい? そう思っていると、 「森保君、夕飯はウチで食べてく?」 とエリカさんから夕食のお誘い。 「え、いんですか?」 ご好意には甘えておかないとな。 「もちろん!あ、明日は土曜だから、良かったら泊まってく?」 「ちょ、おかーさん!」 エリカさん、マジ神! 「わーい、もりやすクンおとまりー!」 「二人とも、佐久間の都合もあるから!ね、佐久間?!」 そうそう…、 「ん?俺は別に明日の予定ないし。なっちゃんともまだ遊びたいから、お言葉に甘えて泊まりたいけど?」 勿論、お泊りさせていただきますよ。 「?」 藤とエリカさんが話していると、なっちゃんが俺の服を引っ張ってきた。 そして…、 「ねーねー、もりやすクン。わたしも、"さくま"ってよんでい?」 なっちゃんは、さっき藤が呼んだ"佐久間"を自分も呼びたいようだ。 「ごめんね、なっちゃん。"佐久間"はふーちゃんだけなんだ」 そう、藤だけ。 「そっか…」 なっちゃん、そんな悲しい顔しないで。 「それじゃー、"さっくん"はどうかな?」 「…うん、"さっくん"がいい!」 小声で笑う天使を確認して顔をあげると、いつの間にか、エリカさんはリビングからいなくなっていた。 「ってか、佐久間ホント泊まって大丈夫?家の人とかいいの?」 オマエは俺が泊まるの嫌なのか? 「あー、大丈夫大丈夫。連絡入れとけば大丈夫だから。あ、そうだ!なっちゃん、一緒にお風呂入ろっか?」 「うん!!さっくんといっしょに入るーーー!」 「さ、さっくん?」 「さっき、藤が俺のこと"佐久間"って言ったろ?」 良く言えば、それだけ"佐久間"呼びが慣れたってことなんだが…。 二人の時だけって言ったろ? 「だから、なっちゃんも俺の事"森保君"じゃなくて…」 「わたし、さっくんってよぶー!そして、さっくんとおふろ入るー!」 「さっくんも、なっちゃんとお風呂入るー!」 まぁ、藤の家だから大目に見てやろう。 俺も、オマエん家では藤って呼ばせてもらうわ。 なーんて思っていると、 「ねーねー、ふーちゃんもいっしょに、おふろ入いる?」 …第二の神降臨。 「な、なっちゃん、我が家のお風呂、そ、そんな広くないよ?三人も一緒に入れないよ?」 「んー、そっかぁ…。みんなで入りたかったなぁ…。」 まぁフツーに考えれば、いくらなっちゃんが子どもとはいえ、三人は厳しいか。 ただ、 「残念だねー」 おっ、藤が困った顔してる。 ホント、一緒に入れないのは残念。 「みんなでお風呂入りたかったねー、なっちゃん」 「ねー、さっくん」 藤、もっと困れ。色々考えろ。 「ふーちゃん、佐久間君の着替え脱衣所に用意しといたから。佐久間君、服は夫のになって申し訳ないんだけど、サイズは大丈夫だと思うから」 「いえいえ!ありがとうございます」 用意が終ってリビングに戻ってきたエリカさん。 サラッと"佐久間君"と言ったエリカさん。 藤よりナチュラルに言うなぁ。 「お布団は三人分、客間に用意したからー。じゃぁ、お母さん行ってくるから」 客間に三人分ってことは…。 これからはエリカ様と呼ばせていただきます。 「お母さん、いってらっしゃーい」 「お仕事、気をつけて行ってきてください」 「佐久間君ありがと。それじゃ、いってきまーす!」 エリカ様、 「お風呂は三人で入れないけど、寝るのは三人で寝ようねー、なっちゃん」 貴方のお導きに感謝いたします。

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