23 / 33
11-S
「わーい、またわたしのかちー!」
「ホント、なっちゃん強いなー!」
キャキャと笑うなっちゃんとババ抜きに連敗する俺。
只今、午後5時22分。
天使すぎるなっちゃんによる、悪魔の所業のようなひたすらババ抜き。
さすが藤の妹だ。
手洗いうがいをしてリビングへ向かうと、
「おかえり、ふーちゃんと…」
「もりやすクンだよ!」
「森保君ね。初めまして森保君。藤の母のエリカです。いつも息子がお世話になます」
キッチンから顔を覗かせた藤母。
「初めまして、森保佐久間です。こちらこそ、いつも三島君にお世話になってます」
ここも、押さえておきたいポイントなので、笑顔で挨拶。
「もりやすクン、トランプしよ!トランプ!」
早速、トランプを持ってきたなっちゃん。
先ずは周囲からだな。
*****************
トランプ開始から約1時間。
ババ抜きのエンドレス&リピート。
たぶん20回以上している。
それでも、なっちゃんは飽きずにババ抜きを要求。
そろそろ、神経衰弱とか七並べとか、他のゲームにしないかい?
そう思っていると、
「森保君、夕飯はウチで食べてく?」
とエリカさんから夕食のお誘い。
「え、いんですか?」
ご好意には甘えておかないとな。
「もちろん!あ、明日は土曜だから、良かったら泊まってく?」
「ちょ、おかーさん!」
エリカさん、マジ神!
「わーい、もりやすクンおとまりー!」
「二人とも、佐久間の都合もあるから!ね、佐久間?!」
そうそう…、
「ん?俺は別に明日の予定ないし。なっちゃんともまだ遊びたいから、お言葉に甘えて泊まりたいけど?」
勿論、お泊りさせていただきますよ。
「?」
藤とエリカさんが話していると、なっちゃんが俺の服を引っ張ってきた。
そして…、
「ねーねー、もりやすクン。わたしも、"さくま"ってよんでい?」
なっちゃんは、さっき藤が呼んだ"佐久間"を自分も呼びたいようだ。
「ごめんね、なっちゃん。"佐久間"はふーちゃんだけなんだ」
そう、藤だけ。
「そっか…」
なっちゃん、そんな悲しい顔しないで。
「それじゃー、"さっくん"はどうかな?」
「…うん、"さっくん"がいい!」
小声で笑う天使を確認して顔をあげると、いつの間にか、エリカさんはリビングからいなくなっていた。
「ってか、佐久間ホント泊まって大丈夫?家の人とかいいの?」
オマエは俺が泊まるの嫌なのか?
「あー、大丈夫大丈夫。連絡入れとけば大丈夫だから。あ、そうだ!なっちゃん、一緒にお風呂入ろっか?」
「うん!!さっくんといっしょに入るーーー!」
「さ、さっくん?」
「さっき、藤が俺のこと"佐久間"って言ったろ?」
良く言えば、それだけ"佐久間"呼びが慣れたってことなんだが…。
二人の時だけって言ったろ?
「だから、なっちゃんも俺の事"森保君"じゃなくて…」
「わたし、さっくんってよぶー!そして、さっくんとおふろ入るー!」
「さっくんも、なっちゃんとお風呂入るー!」
まぁ、藤の家だから大目に見てやろう。
俺も、オマエん家では藤って呼ばせてもらうわ。
なーんて思っていると、
「ねーねー、ふーちゃんもいっしょに、おふろ入いる?」
…第二の神降臨。
「な、なっちゃん、我が家のお風呂、そ、そんな広くないよ?三人も一緒に入れないよ?」
「んー、そっかぁ…。みんなで入りたかったなぁ…。」
まぁフツーに考えれば、いくらなっちゃんが子どもとはいえ、三人は厳しいか。
ただ、
「残念だねー」
おっ、藤が困った顔してる。
ホント、一緒に入れないのは残念。
「みんなでお風呂入りたかったねー、なっちゃん」
「ねー、さっくん」
藤、もっと困れ。色々考えろ。
「ふーちゃん、佐久間君の着替え脱衣所に用意しといたから。佐久間君、服は夫のになって申し訳ないんだけど、サイズは大丈夫だと思うから」
「いえいえ!ありがとうございます」
用意が終ってリビングに戻ってきたエリカさん。
サラッと"佐久間君"と言ったエリカさん。
藤よりナチュラルに言うなぁ。
「お布団は三人分、客間に用意したからー。じゃぁ、お母さん行ってくるから」
客間に三人分ってことは…。
これからはエリカ様と呼ばせていただきます。
「お母さん、いってらっしゃーい」
「お仕事、気をつけて行ってきてください」
「佐久間君ありがと。それじゃ、いってきまーす!」
エリカ様、
「お風呂は三人で入れないけど、寝るのは三人で寝ようねー、なっちゃん」
貴方のお導きに感謝いたします。
ともだちにシェアしよう!