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12-S with N②
「好きよりもっと深いかな」
「ふかい?」
まだ小学生のなっちゃんに、好きには煌めきだけじゃない、仄暗い一面が伴うことを言っても解らないだろう。
ただ、彼女が解らなくても、この感覚を言わなければならない。
そうしなければ、彼女は、俺が藤の隣にいる事を許さないだろう。
今のなっちゃんは、子どもじゃない。
一家族として、兄を心配する妹だ。
「俺はね、その深いところに、ふーちゃんが堕ちてくるのを待ってるんだ」
それでも、できるだけ解りやすく、彼女に伝わるように努める。
「おとしあな?」
「そう。だから、その落とし穴にちゃんっと堕ちてくれるように、色々仕掛けをしているんだ」
気づかれないように、でも確実に。
「いろいろ?」
「うん。例えば、ふーちゃんの好きな食べ物を買ってあげたりとか?」
「…いじわるなこともするの?」
少し不安そうに質問してきたなっちゃん。
「んー俺はアキくんみたいなイジワルはしないかな。同じイジワルでも、ふーちゃんが好きなイジワルをするね」
「ふーちゃんがすきないじわる?」
想像して、思わずニヤけそになる口元を手で隠す。
「ふーちゃんは、見つめられるのに苦手だよね?」
「うん!」
「だから、俺も、たまにふーちゃんのことじーっと見るっていうイジワルするんだ」
今は見つめるだけ。
「あー、わたしもソレする!」
「そしたら、ふーちゃん恥ずかしいそうにキョロキョロするんだ」
「わー、ふーちゃんっぽい!りんごみたいにあかくなるんだよね」
その顔は、なっちゃんにも見せてるのか。
「さっくんのすき、ふかいすき?、なんとなく分かるよ」
「ほんと?」
「うん。かわいいふーちゃん見たくなるすきだよね!」
んー、当たらずしも遠からずだね。
俺がみたいのは、"かわいい"だけじゃないんだよ?
「さっくん、ふーちゃんだいじにだいじにしてね」
なっちゃんから大人びた雰囲気は消え、子どもらしい表情に戻った。
「勿論」
どうやら認めてもらえたようだ。
ただ、大事にするけど、俺の思う"大事に"のやり方でだけどね。
「あと、俺がふーちゃんの事好きなの、ふーちゃんにはナイショね。しーっね。」
口元に人差し指を当てて俺が言うと、
「うん!しーっね!」
クククッと、笑いを堪えるように真似して言うなっちゃん。
「あ、そうだ!」
何かを思い出したかのように言うと、天使のような笑顔から、小悪魔のような笑顔になったなっちゃん。
「あのね、わたしがおねがいごとするときね、ふーちゃんのことじーっと見ていうと、ふーちゃんなんでもしてくれるし、なんでもゆるしてくれるの」
「なんでも?」
何でもしてくれる?
「うん、なんでも!だから、さっくんも、やってみたらいいよ」
小悪魔が囁く。
「じーっと見ておねがいごとをいうの」
もし、見つめる以上をしても許してくれる?
「きっと、さっくんのおねがいごとも、きいてくれるよ」
なっちゃんのような"かわいい"お願い事じゃなくても?
「コレ、"ふーちゃんのすきなイジワル"に、ピッタリだよ」
小悪魔の笑顔とも違う微笑を浮かべるなっちゃん。
「さーて、さっくん!10かぞえて、おふろあがろ?」
無自覚の堕天使なっちゃん、末恐ろしい…。
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