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15-S

「…さくま、なっちゃん、ねた?」 「あぁ、ねてる」 なっちゃんが寝てるかどうか小声で確認する藤とそれに小声で返答する俺。 只今、午後10時31分。 風呂上がりの藤、パジャマかなぁー。 ふすまをを開け、ちょいと覗く藤。 可愛いな、オイ。 「水、持ってきた」 なっちゃんを起こさないように、そーっと客間に入り、そーっと俺にペットボトルを渡す。 「あぁ、ありがとう」 俺の希望通りのパジャマを着てくれて。 しかも、ざっくり編まれたカーディガンまで着ているという…。 「ありがとう、なっちゃん寝かしつけてくれて」 そう言いながら、なっちゃんの左側に敷かれていた布団に入る藤。 あーもうパジャマ姿見れねーのか。 「いやいや、こちらこそだよ。急な泊まりだったのに。ホント、ありがと」 豆電球の明かりが藤を照らす。 風呂上がりで少しポーッとなっている藤に目が覚める。 ヤバいと思い視線をなっちゃんに落とす。 「それにしても、なっちゃん天使だな。藤がシスコンになるのも分かるわ」 遊び疲れてぐっすり寝ているなっちゃんを見たら落ち着いた。 「そ、そうだろ」 「俺んトコは姉貴だからな。小学校ぐらいまでこき使われてたわ」 ちーせー頃、姉貴にパシリだの代行掃除だのさせられたなぁ。 一番最悪だったのは、女装させられて妹として姉貴のダチに紹介させられたやつだな。 「佐久間は、おねーちゃんがいるんだ?」 苦い思い出に思いを馳せていると、藤が興味をもったのか、姉貴について聞いてきた。 「ああ。4つ離れた姉貴がいる」 「へぇー。佐久間に似てる?」 「そうだな。よく似てるって言われるな」 「じゃあ、美人なおねーちゃんだ」 「まぁ、弟が言うのもだけど、美人だな」 「なーんだ、佐久間もシスコンじゃん」 「俺はオマエみたいに、ベッタリじゃねーよ」 普段の電話のような会話だ。なんとわなしの会話。 なのに、顔を崩して笑う藤。 「何ニヤニヤしてんだ」 「へへっ、別に」 なーにが楽しんだか。 まぁーそういう俺も、この感じは好きだけども。 「なぁ、また藤の家、遊びに来てもいいか?」 ってか、来るけど。 「も、もちろん!」 一応、住人の了承は得ないとな。 「なっちゃんも喜ぶよ」 藤は、そんな顔でそういう事言うのか。 ふーん…。 じゃあ、俺も…。 「なぁ、なっちゃんだけ?」 藤の好きな"イジワル"してあげるよ。 「えっ?」 「藤は喜んでくれないの、俺のお泊まり?」 何あたふたしてんだよ、藤。 「そうだ、今度は藤が俺ん家に泊まりに来れば?」 な、そうしよ? 「そしたら、もっと藤と話せるだろ?」 なーそうだろ? 「なっちゃんと遊ぶのも楽しかったけど、藤ともっと遊びたいなー」 なっちゃんの言葉を思い出す。 『じーっと見ておねがいごとをいうの』 『きっと、さっくんのおねがいごとも、きいてくれるよ』 うん、きいてくれそうだよ、なっちゃん。

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