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16-F
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あ、佐久間だ!
俺が佐久間に擦り寄ると、佐久間は頭を撫でてきた。
くすぐったいけど気持ち良くて、もっと擦り寄る。
すると、ヒョイと俺を持ち上げた佐久間。
佐久間の腕の中はあったかくて、今度は胸に擦り寄る。
先ほど頭を撫でていた手が、頬を撫でる。
嬉しくて、思わずペロっと佐久間の指を舐めた。
"あ、しまった!?"と思い、恐る恐る顔を上げると、甘い顔の佐久間が目に入る。
その顔がまた嬉しくて、何度も何度も指を舐める。
佐久間が目を細めた。
急に心臓がドキドキしだす。
『藤』
佐久間の顔が近づいてくる。
ドキドキしているのに、俺も佐久間に顔を近づける。
『藤、俺の名前呼んで』
ごくりと息を飲んで呼ぶ…。
『にゃぁ〜』
ん?にゃぁ〜?
『わー、にゃんこだー!』
突如なっちゃんが現れた!
しかも、デカい!
そして、俺は猫!?
『にゃんこ、にゃんこ!』
いつの間にか佐久間はいなくなり、大きななっちゃんが、ぎゅーっとハグしてきた。
く、苦しい…。
苦しいぃ…、
『に"ゃぁぁぁ』
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「あ"ーーーーーーー!」
バッチっと目を開ける。
「ゆ、夢?」
重いと思って首をあげると、なっちゃんが俺の上に、仰向けで乗っかっていた。
どおりで苦しかったわけだ。
「よいしょ!」
なっちゃんを元の位置に戻す。
横の佐久間を見ると、まだ寝ていた。
よかった、俺の叫び声で起こさなくて。
それにしても、久しぶりに夢を見たなぁ。
佐久間の寝顔をこっそり確認。
「へへっ」
うん、寝顔も勿論イケメン!
日本人にしては彫の深い顔を、障子からの朝日が照らす。
彫刻のような佐久間に、朝からドキドキしてしまう。
心臓に悪いので視線を外して、時計を見る。
只今、午前7時30分。
とりあえず布団を畳んで、朝ごはんを作りますかな。
佐久間は和食派かな?洋食派かな?
「藤」
夢で聴いた声の方を向く。
「おはよう」
夢で見た甘い顔がそこにあった。
ホントは気づいてたんだ。
はじめっから。
『…見てんじゃねーよ』
そう言って目をそらした君に、初めから…、落ちていたことに。
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