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2.初陣の褥

 てっきり相手の部屋に呼ばれていくのかと思っていたら、自分の部屋で待っているよう伝えられた。  行くよりも待つほうが、心が焦れ焦れしてしまう。  まっさらな白い襦袢に身を包んだ康頼は、ソワソワしながら枕元に座して為明が来るのを待っていた。 (どうにも、落ち着かぬ)  部屋の隅でチラチラと揺れている灯明に照らされて、闇夜にぼんやりと寝具が浮かび上がっている。窓からは青白い月光が漏れ入ってくるが、灯明の茜に押されて部屋の隅で遠慮をしていた。  食事を終えて身ぎれいにして、いざ初夜だと意気込んではみたものの、相手が来ないではどうしようもない。本でも読んで時間を過ごせばいいのだろうが、輿入れの日には粛々と情けを受けるものではないか。それに本を開いたとしても、頭に入ってくる気がしない。 (今宵の戦果によって、今後の命運が決まるやもしれぬのだ)  否が応でも気合が入る。  色夫となるべく養育されてきた康頼にとって、初夜は戦の初陣とおなじ意味を持っていた。 (とにかく、どのような仕儀となっても、ありがたく受け入れる。望まれれば、いかなる恥辱にも応えねば)  無垢な体をそのまま相手に任せきり、希望を伝えられればそのとおりにせよと教えられた。大ざっぱな内容は勉強していたが、細かな所作はなにも知らない。すべて相手のよきように育ててもらえと、送り出された。 (為明殿の好むままに、なさねばならぬ)  口吸いをすることと、身を繋げる箇所の知識だけはあるが、ほかにどのようなことをするのかを康頼は知らない。そういうものは好みがあるから、相手に実地で教えてもらえと言われていた。そして国益になるよう、しっかり励めと。 (国の繁栄のために励みまする。立派に、成し遂げてみせまする)  キリッと眉をそびやかせて、姿勢正しく待っていると足音が耳に届いた。待つことが息苦しくなってきたころだったので、康頼はホッとする。 (いかん、いかん)  これからが本番なのに、気をゆるめてどうするのだと自分を叱咤した。 「遅くなった。待たせたな」 「いえ」  スッと膝を滑らせて体ごと為明に向き、床に手を着いて頭を下げる。 「今宵から、よきようにお相手くださりませ」 「うむ」  明解な返事と共に襖が閉められた。顎に手をかけられて上向かされる。息が鼻にかかるほど顔を近づけられ、口吸いをされるのかと目を閉じると、ハハッと快活に笑われた。 「そう緊張をするな。と言っても、無理があるか。はじめては誰でも緊張をするものだからな」  そうっと目を開けると、為明はニコニコしている。古くからの友のごとき顔をされて、康頼はとまどった。 「あ、あの」 「ん?」 「いえ」  目をそらすと、肩を叩かれた。あぐらをかいた為明に「楽にしろ」と命じられる。 「楽に、ともうされましても」 「できないか」  おずおずとあぐらをかくと、そうだとうなずかれた。髪に触れられ、頬に手を添えられる。心臓がバクバクと鳴り響き、康頼は視線をさまよわせた。 「なにもかも、はじめてか」 「う」 「まあ、そうだろうな」  立ち上がった為明は灯明を消した。月明りだけとなった室内は藍色に沈んでいる。 「こちらのほうが、すこしは気も楽だろう。俺としては、おまえの顔がよく見えないのが残念だが」 「ならば、灯りをつけてくだされ」 「俺の意に添うようにと命じられてきたか」 「そのようにしていただきとうござる」  やれやれと吐息で告げられ、しくじったかと康頼はヒヤリとした。 「康頼」 「は」  大きな手のひらに両頬を包まれて、康頼はおそるおそる目を上げた。栗色の瞳がやさしく輝いている。ドキリと康頼の心臓がはねた。 「そう気負わなくてもいい、と言っても無理だろうな。なら、強制的に緊張をとくしかないか」 「え……んっ」  やわらかく唇が押しつぶされる。何度もついばまれ、確かめられているのだと思った康頼は、ますます体を硬くした。舌先で唇をつつかれて、薄く開くと角度が変わった。歯裏や内頬、上あごをやわらかなものでくすぐられ、舌の置き場がわからなくなる。惑う舌を引き出されて吸われると、キュウッと切ない甘さが生まれた。 「ふっ、ぅん」  鼻にかかった息が漏れ、子犬じみた音におどろく。目をまんまるにした康頼はニヤリと細められた為明の、月光に鋭く光る瞳に心をとらわれた。 「んっ、ぅ……ふ、ぅうんっ、ん」  口内をまさぐられる康頼の唇から、悩ましく甘やかな呼気が漏れる。それを味わう為明の眼の光が鋭さを増して、康頼の心はギュッと痛んだ。 (なんだ、これは)  体中が淡い痺れに見舞われる。浮遊感に包まれる肌とは裏腹に、心臓はクッキリと存在を主張していた。未知の感覚にクラクラしてきた康頼は、無意識に腕を伸ばして為明の袖を掴んだ。 「んっ、ふ、ぅん、っう」  蹂躙される口腔が、ジンワリと甘美なものをふくらませた。震える指を握り込んだ康頼の下肢がムズムズする。ゆっくりと血の集まっていくそこを意識すれば、口内の快感はさらに増した。 「はふっ、ん、ぅ、うう」  頭をもたげた股間が震える。淡々と反応を示すそこがうずいて、康頼はわずかに腰をずらした。気づいた為明の手が腰にまわり、布団の上に寝かされる。口吸いはそのままで、のしかかられた康頼は布団を掴んだ。肌が粟立ち、下帯に圧迫されている腰の短槍が、穂先を為明に向けて刺激を求めた。 「んっ、ぅ……は、ぁ」  唇が離れる。ぼんやりと見上げた康頼の額に、為明の唇が落ちた。 「どうだ。力は抜けたか」  茫洋とした顔で康頼がコクリと首を動かすと、為明はたのしげに歯を見せる。屈託のないその顔に康頼の心がわなないた。 (なんと無防備な顔をなされるのだろう)  大国の主というのは、このようにおおらかであけすけなものなのか。ただ単に、彼特有のものなのか。どちらにしても好感が持てると、緊張をほぐされた康頼もつられて笑顔になった。 「いい顔だ」  満足してもらえたらしい。さて、ここからはどうすればいいのか。  為明の長い指が康頼の髪を梳く。やわらかく細められた瞳の奥には、鋭い光が宿ったままだった。どこか獣めいた印象のある為明の瞳を見つめていると、康頼のみぞおちのあたりが熱くなった。唇がさみしくなって、接吻の余韻を無意識に求める康頼に気づいた為明は、唇を下ろして康頼のさみしさを埋めた。 「んっ、ん」  軽く触れるだけの接吻に、康頼は目を閉じる。すべての感覚を口に集めて、為明の息を感じていると、ふいに唇がそれて耳朶に触れた。 「っ、あ」  耳の中に舌を入れられ、ゾクゾクと背骨が淫靡な悪寒に震える。軽く歯を立てられて、帯を解かれた。前を広げられ、素肌の肩を撫でられる。 「康頼」 「っ」  耳に注がれたささやきに息を呑み、康頼は唇を噛んだ。こわばった康頼をなだめるためか、為明の手は肩や胸をしきりと撫でる。 「よくぞ、来てくれた」 「え?」 「これから、よろしく頼むぞ」 「それは、こちらがもうさねばならぬことにござれば」 「いいから。頼まれておいてくれ」  疑念を持ちつつ受け止めた康頼に、為明は心底うれしそうに頬を持ち上げた。ドキリと康頼の胸が熱くなる。 「それでは、いまからおまえを抱くぞ。かまわないか」 「そうしていただくために参りましたゆえ、為明殿の好きに扱うてくだされ」 「そうだったな」  首筋に顔を寄せられ、軽く吸われる。為明の手が、さきほどとは違う雰囲気をかもして動いた。脇と胸の隙間を指の腹で何度も擦られると、奇妙な感覚が湧きあがる。唇が移動して、鎖骨のくぼみを舐められた。 「っ、は……ぁ」  熱っぽい息の塊が、康頼の口からこぼれ出た。為明は親指で康頼の胸の色づきに触れると、からかうように外周をクルクルなぞる。淡い刺激に肌がうずいて、康頼は喉奥にせり上がる息を、歯を食いしばってせき止めた。 「息を止めるな。そのまま、素直に吐き出せ」 「は……っ、う」 (なれど、自然と止めてしまいまする)  反論をしてはいけない。とっさに出かかった言葉を呑んだ康頼の口に、為明の指が入った。口内を指でまさぐられ、喉が開く。 「う、ふ……っ、は、ふ、ぅう」  指の腹で舌や頬裏を擦られると、唾液が湧いた。それを飲み下そうと動いた口が、為明の指を吸う。 「んっ、う……ふぅ」 「いいな」  なにが、とは音にできなかった。艶っぽくきらめく為明の瞳に、康頼の心音と体温が高まる。股間に巡る血がたぎり、汁が漏れて下帯がわずかに湿った。濡れた下帯が張りついて、康頼の先端をうっすらと透かしている。  康頼の口腔を指で愛撫しながら、為明は襦袢を脱いだ。たくましい肉体があらわになる。健康的な肌に視線を走らせた康頼の口から、為明の指が外れた。 「俺の体が見たいのか」 「そういうわけでは、ござらぬ」 「そうか」  つまらないと言われた気がして、康頼はあせった。 「いや、その……っ」 「余計な気をまわさなくてもいい。俺はおまえを手放さない。だから、心配せずに思うままでいてくれ」 (ほんとうだろうか)  疑う康頼の鼻先に、為明の唇が触れる。濡れた指で乳首をつままれ、康頼は「あっ」とかすかな悲鳴を上げた。濡れているからか、強くされても痛くない。もてあそばれて育った乳頭から、ムズムズと甘やかな痺れが全身に走った。 「は、ぁ……あっ、ん」 「心地いいか」 「ん、ぅ」  どうにも答えようがなくて康頼が口を閉じると、為明の舌にやさしくこじ開けられた。 「気持ちがよさそうな顔をしている」  ささやきが口内に注がれて、康頼はとろけた。 (なんという心地か)  ふわふわと自分の輪郭がおぼつかなくなる。闇になじんで溶けてしまいそうだ。為明が触れている箇所と、そこから広がる甘美な痺れ、まろやかなうずきだけが己の存在を示してくれる。 「んっ、ぁ、あ……っ、は、ぁあ」  ゆったりと引き出された快楽にひたる康頼を、為明はいとおしげな瞳で包む。はじめての快感にたゆたう康頼には、気づく余裕などなかった。淡々とした刺激にあぶられて、康頼の意識は淫靡な酔いに満たされた。 「は、ぁ……っ、あ、はぅ、んっ、う」  艶やかに鈍く輝く康頼の瞳は、うっすらと濡れていた。月光に浮かぶ白い肌は興奮のために桃色に染まり、ほんのりと汗で湿っている。上下する康頼の胸に唇を落とした為明は、彼の肌を味わった。 「は、ふぅ……っく、ぅんっ」  乳首を吸われた康頼は、鋭く啼いた。チロチロと舌先で転がされて、軽く歯を立てられると肌の熱が上がった。大きく口を開いた康頼は、うずく股間を持て余して膝を折り、脚を開いた。先走りを含んだ下帯におおわれた陰茎が、ビクビクと痙攣している。 「ぁ、はぁ、あっ、あ、ああ」  胸の先の片方を口で、もう片側を指でかわいがられる康頼は涙をにじませ、体をくねらせた。心地いいのにもどかしい。はじめての愛撫にもだえる康頼の股間はこれ以上ないほど育ちきり、淫汁を溢れさせていた。 「は、ぁあ、あ、あうっ、んっ、うう」 「いい声だ」 「ひぁあっ」  キュッと強く乳首を吸われて、康頼はのけぞった。浮いた腰に為明の腕が入り、抱きしめられる。肌が密着して、股間が擦れた。 「んぁ、あっ、あ」 「こんなに熱くして」 「は、ぁ……っ、んぅっ」  布越しに握られた康頼は、うっとりとほほえんだ。それがどれほど妖艶なものかを知らぬまま、為明を魅了する。唇を舐めた為明の目に、獰猛な炎が揺れた。 「康頼」 「んぁっ、あっ、ああ」  激しい手淫を与えられ、顎をそらせた康頼は為明にしがみついた。高みへと導かれた康頼は、あっけなく精を吐き出す。 「ああっ……はぁ、あ……ふ」  余韻に包まれ息を吐き出す康頼の耳に、為明の熱っぽい息がかかった。 「下帯をしたまま漏らすほど、よかったか」 「っ!」  我に返って真っ赤になった康頼は、わなわなと唇を震わせた。初心な反応に、クックッと為明が喉を鳴らす。 「いい反応だ」 「うっ、そ……それがし、その」 「粗相だとは思っていない。俺がそう仕向けたのだからな。どうだ、よかっただろう」  得意げに問われても、性に未熟な康頼に答えられるはずもない。羞恥をこらえて口をパクパクさせるのが精一杯だ。  たのしげに喉を鳴らした為明は、体を起こしてヒョイと康頼の脚を持ち上げた。 「わっ」 「この程度のことでそんな反応をするのなら、こんなことをすればどうなってしまうのだろうな」 「えっ、あっ!」  濡れた下帯を外されたかと思うと、ためらいもなく陰茎を口に含まれ、康頼は目を白黒させた。 「なっ、ぁ……っ、んぅうっ」  ぬらりとあたたかな場所に包まれた敏感な箇所は、すぐによろこびを示した。体の反応とはうらはらに、康頼は大慌てで為明の肩を叩く。 「たっ、為明殿……っ、おやめくだされ! そのようなっ、あっ、ああっ」  聞く耳持たぬと吸い上げられて、康頼は可憐な悲鳴を上げた。めくるめく快楽にクラクラしながら、放ったばかりなのに為明の口淫に勇んで育つ己の肉欲にうろたえる。 「為明殿、もう……っ、あ、ああっ」 (このままでは、為明殿の口の中に)  そう思った瞬間、背徳感に襲われた。後ろめたさにあおられた快楽が猛威を振るい、康頼は困惑した。 「っ、いけませぬ、あっ、もう、あっ、あ、為明殿っ、為明殿ぉ」  涙目で訴えても、為明の口は離れない。力なく為明の肩を揺さぶったり叩いたりしながら抗議する康頼は、絶頂が近いことを悟った。 (ああっ、で、出てしまうっ) 「為明殿っ、も……あ、くぅうっ」  がまんできずに漏らした康頼は、解放の余韻とはうらはらに、心臓を冷たくさせてしゃくり上げた。 「ふっ、ふぇ……っ、ううっ」  筒内に残ったものまで吸い上げて飲んだ為明は、腕で顔を隠して泣く康頼にギョッとする。 「なんだ。どうして泣く、康頼」 「ううっ、それがし、為明殿の口に……だ、出して……しまい、もうしわけなく」 「俺が飲みたくてしたんだ。泣く必要などあるか」  腕で顔を隠したまま康頼が首を振ると、まいったなと為明は首に手を当てる。 「すまなかった、康頼。だが、俺が飲みたかったんだ。おまえの味を知りたかった。だから、おまえは悪くない。俺が望んだことだ。気に病むな」  グズッと鼻を鳴らした康頼は、為明がなにを言っているのかわからなかった。 (それがしの味を知りたかったとは、いかなることか)  ああいう行為が為明の趣向なのか。ならばよろこんで受けなければならない。しかしどうしても気がとがめる。こんな反応では満足してもらえない。彼の寵愛を受けるために輿入れをした身でありながら、情けない。 (ふがいない)  くやしさに奥歯を噛んだ康頼の顎がくすぐられる。 「そんなに、いやだったのか」  気落ちした声に、康頼はあわてた。 「そうではござらぬ! なんというか……どう説明すればよいのか、わかりませぬ」 「気持ちがよくなかったか」 「いえ……それは、そのようなことは」 「なら、よかったか」  ためらいながら、康頼は首の動きで「そうだ」と認めた。 「なら、またしてもいいか」 「うっ」 「どうだ」  ゴニョゴニョと口の中で言葉をかき混ぜた康頼は、顔から火を噴きながらうなずいた。 「よかった」 「申し訳ござらぬ」 「なぜ、あやまる」 「それがし、未熟ゆえ」 「しかたないさ。これから、覚えていけばいい」 「これから」 「そうだ。――初心者に、あんまり色々するのも悪いからな。今日はこのくらいにしておくか」 「えっ」 「ん?」 「つ、繋がりはいたしませぬのか」 「このくらいで泣くようじゃ、まだはやいだろ」  それは困ると、康頼はあわてて離れかけた為明に手を伸ばして、引き止める。 「していただかねば、困りまする」 「色夫の務めってやつか? そんなこと、気にしなくてもいい。機会は今日だけじゃないからな」 「なれど」 「心配するな。すこしずつ慣れていけばいいさ」  そう言って、為明はゴロリと横になった。てっきり去られるものと思った康頼は、機嫌を損ねたわけではないらしいと、わずかに安堵する。 (それがしを気遣ってくださるのは、ありがたいが)  これが原因となって、国元への益が薄くなると困る。康頼は為明の股間に目を置いた。下帯を持ち上げているそこの具合は、おなじ男だけに理解できる。 (あの状態で眠ってしまわれるおつもりなのか)  本心では、あきれて手を出す気が失せたのではないか。そう疑った康頼は覚悟を決めて、為明の股間に顔をかぶせた。 「うおっ?」  おどろいた彼に邪魔をされる前にと、康頼は下帯をずらして隆々とそびえる陰茎を取り出し、ままよと一気に口に入れた。勢いあまって喉を突き、えずいてしまう。 「げほっ、げほっ」 「慣れないことを、無理にしようとしなくていい」 「なれど」 「わかった。身を繋げる。だから、無理はするな」  やさしく髪を撫でられて、康頼は落ち込んだ。ふいに義朝の姿が浮かんで、彼ならば上手に相手ができるのではと、さらに気落ちする。そんな康頼を抱きしめる為明の表情は、おだやかだった。  首筋にキスをされ、康頼はちいさく震えた。うつぶせに寝かされて尻を持ち上げられ、左右に割られて息を呑む。 「じっとしてろよ」  繋がる準備をするのだと、康頼は身を硬くした。緊張に震える尻に苦笑して、為明は脱ぎ捨てた襦袢から竹筒を取り出してふたを開け、丁子油を双丘の谷に垂らす。 「ひっ」 「いまは冷たいが、すぐに熱くなる」  グッとこぶしを握りしめ、康頼は冷ややかな丁子油の感触に堪えた。為明は指に油を絡め、菊座をつつく。ヒクヒクと反応したそこに相好を崩して、ゆっくりと指を沈めた。 「っ、あ、ぅ……く、ふぅう」  広げられる感覚に、康頼はうめいた。指は内壁をくすぐって、抜けたと思うと油が注がれ、ふたたび戻ってきた。 「ぁ、んぅ、う」 「息を詰めるな。吐くんだ」  そう命じられても、簡単にはできなかった。体が勝手にこわばって、息が止まってしまう。気づいた為明は秘孔をさぐりながら、康頼の陰茎を愛撫した。 「っは、ぁ……んっ、くううっ」  うしろの奇妙な感覚が、前の快楽にほぐされる。息を抜いた康頼の内壁がうごめいて、為明の指にすがった。 「は、ぁ……あっ、ぅ、う」  指が増やされ、丁寧に広げられる。いつしか奇妙な不快感は消え失せて、内壁は媚肉へと変化した。 「ぁ、ああっ、はぁ、あっ、あ」  奥をまさぐられると、乳首がジンジンとうずいた。体を揺らして布団に擦りつける康頼の姿に、為明の股間がいきり立つ。 「そろそろ、いいか」  指が抜かれ、為明の熱があてがわれた。丁子油で濡れそぼった谷を陰茎で擦られて、康頼は無意識に腰を揺らした。 「いい反応だ」 「っ、あ、はくぅうっ」  質量のあるものに貫かれ、康頼は悲鳴を上げた。ズッズッと律動を刻みながら、為明は腰を進めて康頼の具合を確かめる。 「はっ、はぁっ、あ、あぅうっ」 「痛くはないか」 「は、ふ……ぅあっ、あ」 「なさそうだな」  声の調子で様子を確かめ、為明は慎重に根元まで埋め込んだ。はじめての結合の圧迫に、康頼は口を大きく開いてあえいだ。 (頭の先まで、貫かれて……っ)  それほどの存在感が、己の内側にある。息苦しくてたまらないのに、抜いてほしいとは思わない。 (なんだ、これは)  これが繋がるということか。  頭の芯が痺れている。呑み込んだ肉がひくついている。康頼は布団を握りしめた。 「康頼」  呼びかけられても、返事をする余裕はなかった。為明はわずかに揺れて、康頼の反応を試した。 「っ、は、ぁ、あ」  息苦しそうではあるが、いやがっている気配はない。それならばと、為明は己の槍で康頼の内側をゆるゆると擦った。 「はっ、ぁ、あ……っ、あ、は、ぁはぁう、う」  擦られるごとに、康頼の緊張はほぐれた。体の芯がグズグズに溶けて、為明の槍が背骨の代わりに体の支えになっていく。  そんな感覚におちいるほど、康頼はとろけていった。  淫らにほぐれた康頼の腰をしっかりと掴み、ニヤリとした為明が勇躍する。唐突に激しくなった槍の突きに、康頼は翻弄された。 「はっ、はんっ、は、ぁっ、あっ、あああっ、あ、ああ」  突かれるごとに嬌声がほとばしる。揺さぶられてめまいを起こし、なにも考えられなくなった康頼を為明は追い立てた。 「キュウキュウ締めつけて、持っていかれそうだ」 「はふっ、ぁ、はぁあううっ、あ、あんっ、あぁ」  その言葉がウソではない証拠に、為明はひときわ深く突き入れると精を放った。 「くっ」  ドッと熱いもので奥を打たれた康頼も決壊する。 「は、ぁぁあああ――っ!」  体を伸ばして遠吠えをした康頼は、痙攣しながら弛緩した。為明が抜けると、支えを失った腰が落ちる。 「康頼」  呼ばれ、抱きしめられた。互いの肌が汗でしっとりと濡れている。吸いつく熱が心地よくて、康頼は無意識に身を寄せた。おどろいた為明は目をまたたかせ、すぐにほほえみ康頼の髪に口づける。 「ほんとうに、よく来てくれた。ゆっくり休め、康頼」  茫洋と淫蕩に漂っていた康頼は、その声を認識するかしないかのうちに、意識を闇に吸い込まれた。

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