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6.搦め手で絡めて

 義朝の手が康頼の内ももにかかる。ついっと撫で上げられた康頼は息を詰めて目を閉じた。クルクルと肌の上で円を描かれ、くすぐったさに似た甘い刺激が康頼の肌を震わせる。 「っ、う」 「康頼の不安を解消し、より仲良くなれる方法は、これが一番でしょう」  笑いを含んだ義朝の声に鼓膜をくすぐられ、康頼の心臓はバクバクと激しく動いた。 「康頼」  吐息交じりの声で呼び、為明が手を伸ばす。頬に触れられてビクリとした康頼の唇が、そっと押しつぶされた。軽い音を立てて唇がついばまれ、上向かされた康頼は薄目を開けた。為明の目の奥に劣情がちらついている。自然と唇を薄く開いて、康頼は為明の舌を招いた。 「ふ……んっ、う」  丁寧に口腔を探られる。酒酔いのためか、気負いはなかった。康頼の背中は薄いが広い義朝の胸に支えられ、前方は為明におおわれている。ふたつの体温に挟まれた康頼の肌はぬくめられ、おだやかなさざ波に洗われるがごとく、寄せては返す静かな官能の波に打たれた。 「んっ、う……ふ、はふ、う」  脚の付け根を義朝の指にくすぐられ、中央の欲肉が起き上がる。もどかしい刺激が為明の口淫に増幅されて、康頼の性感は引き出された。 「ぁ、あっ」  為明の唇が胸乳に落ちて、その先を含む。舌先で転がされ愛されると、濃艶な痺れが走った。たっぷりと濡らされて吸われると、背骨を通じて下肢に快感が駆け下りる。義朝の指が下帯の上を滑り、屹立した康頼をなぞった。 「ふは、ぁ、ああ、あ」 「可憐な」  義朝がつぶやき、康頼の耳朶を噛む。 「もっと、啼かせてやろう」  硬く熟れた胸先から顔を上げた為明が、そこに指をかけてひねった。 「ひぁっ、あ、ああ」  強くされても痛くなかった。為明は乳頭を指の腹でこねたり潰したりしながら、まだ取りかかっていないほうに唇を寄せた。 「は、ふぁ、あっ、ん……っ、ああ」 (なんだ、これは)  じれじれとした刺激に、康頼はめまいを覚えた。もどかしくてたまらないのに、とてつもなく気持ちいい。胸の先は熱を持ち、すこしでも刺激が失せると存在を主張する。布越しに指の腹や爪でなぞられる陰茎は、ビクビクとよろこびに震えながら先走りをにじませた。 「ぁ、はぁ……っ、あ、あ、んぅ、ふ」  もっと――と、口にしてしまいそうで、康頼は下唇を噛んだ。気づいた義朝の指が康頼の口に入り、開かせる。 「せっかくのかわいい声を、隠すのはもったいないよ」 「恥ずかしいのか。それもまた愛らしいが、いまは思うさま啼いてくれ」 「は、ぅふ、あ、ぁう」  肌が震える。ぼんやりと浮かんでいるようで体中がおぼつかないのに、愛撫は強く味わえる。自分が自分ではなくなったようで、康頼はすがるものを求めて腕を伸ばした。 「ふっ、ぅう」  掴まれた為明が目を細め、首を伸ばして康頼の口の端を舐める。義朝の指が外れて、かわりに為明の舌が入り込んだ。 「んむっ、う、うふ……っ、ふ、ぅんっ」  両方の乳首をこねられ、口腔を犯されて、陰茎を撫でられる。そのどれもが康頼を溶かして、淫らな肌へと育てていく。白い肌は薄桃に染まり、瞳は妖しく濡れた。 「は、ふぅ……ぁ、あ」 「下帯をこんなに濡らして。ほら、為明」 「あわれなほどに震えているな」  為明の手が康頼の陰茎に伸びる。握られて、康頼は背をそらした。 「ああっ」 「ひと擦りするだけで、達してしまいそうだな」 「どうしようか、為明。先に、出させてあげる?」  胸をあえがせる康頼は、朦朧とした意識で脚を広げた。 「おや」 「なんだ。出したいとねだっているのか」  艶めいた笑いが康頼を包む。 「それでは」 「望むとおりにしてやろう」  義朝が下帯をはがすと、為明は現れたものを口に含んだ。 「は、ぁああっ」  あたたかな口内に陰茎を包まれて、康頼は鼻にかかった嬌声を漏らした。 「ふふ……為明に魔羅を吸われるの、気持ちいいみたいだねぇ」 「あっ、あ……吸わ……れ?」 「そう。ほら」  うながされて見下ろした康頼は、腰のあたりで揺れる赤い髪を見た。ヒッと息を呑んで為明の頭を押しのける。 「な、なりませぬ……っ、こんなっ、あ、ああっ」 「恥ずかしがることはないよ。為明はこれほど君を愛おしいと思っていると、体現しているだけなんだから」 「んんっ、なれど……っ、これでは、あっ、あ」 「君の精を、為明に呑ませればいい」 「そんなっ、なりませぬっ、あ、は、はぁううっ」  強く吸われて、康頼はあっけなく果てた。筒内のものまで吸い上げた為明が顔を上げると、康頼はボロボロと涙を流す。 「これで二度目だ。気に病むな」 「おや。経験済みだったのか。ほら、康頼。なにも泣かなくともいいでしょう。こういうことは、気持ちがよかったのなら、それでいいんだから」 「っ、しかし……こんな……このような」 「そんなに悔やむのであれば、君も為明にすればいいのでは?」 「えっ」 「ねえ、為明」 「ん、そうだな。してくれるか、康頼」  言いながら前をくつろげた為明が、隆々とそびえる己を星明りにさらした。立派な短槍の姿に、康頼はゴクリと喉を鳴らす。 「さあ、康頼。急所をああして見せて、触れてもいいと言っているんだよ。それだけ信用をされていると、受け取れないかな」 「そ、れは」 「手を伸ばして、口に含んで、心地よくしてあげないと」  トンと背中を押されて、康頼は為明の腹に倒れ込んだ。体を起こして見上げれば、為明の視線にやさしく抱きしめられる。求められているのだと直感した康頼は、胸の奥があたたかくなった。 (この方を、心地よくしてさしあげたい)  自分が味わったものを返したい。  康頼はおそるおそる為明の陰茎に手を伸ばし、下生えをまさぐって根元をつかんだ。短いうめきが為明の口から漏れる。ドキドキと胸を昂らせた康頼は、陰茎に顔を近づけてまじまじとながめた。  自分の体にもついているものなのに、まったくの別物としか見えないそれをどうすればいいのか。初日のようなしくじりはできないと、康頼は慎重に舌を伸ばして舐めてみた。 「ぅ……ん」  いきなり口の中に入れてしまうのは気が引ける。うっかり歯を立ててしまいかねない。扱いかねる貴重な短槍に手入れの油を塗るように、康頼は舌先で欲熱をなぞり続けた。 「は、ぁ……っ、康頼」  熱っぽい為明の息と、手や舌に伝わる熱さから、感じてくれているのだとわかる。もっと気持ちよくなってもらいたいと思いつつ、ここからどうすればいいのかがわからない。 (さきほど、それがしがしていただいたように)  とは思うのだが、これが口の中に入るのかと疑ってしまう。それほど為明のものは立派だった。勢いにまかせて咥え、喉を突いてしまった初夜を思い出す。 「康頼」  意識の外にあった義朝に耳元でささやかれ、康頼はビクリとした。目じりをほんのりと赤く染めた義朝に頭を撫でられ、康頼は幼子扱いされている気分になった。 「口に含みきれそうになければ、この、先端のクビレまでを口に入れて、残りは手で扱けばいいんだよ」  ほらとうながされ、康頼は従った。 「は、ぁ」  為明の熱っぽい息が、康頼の髪に落ちる。 「そうして、飴玉を味わうように舌を動かして」  そのとおりにすると、先端から奇妙な味の汁がにじみ出た。為明が感じているのだとわかって、勇気が湧いた。康頼は舌を動かし、あふれそうになる唾液と為明の先走りを吸いながら、手を動かして脈打つ幹を扱いた。 「そうそう。上手ですよ、康頼」  そう言い残して離れた義朝は、康頼の尻を隠している着物をめくった。小ぶりな尻に手を置いて開き、ささやかに咲いている菊の花に口をつける。 「んんっ!」  舌先でヒダをくすぐられ、康頼は動きを止めた。 「康頼」  続けろと為明にうながされ、康頼は下肢の刺激に堪えながら舌と口を動かした。 「ふっ、んむっ、ぅ、う」  たっぷりと舌で菊座を濡らされて、広げられる。蜜嚢を手のひらに包まれて、康頼の尻が跳ねた。かろうじて為明に歯を立てずに済んで、ホッとする。 「んっ、ん、ぅ……うっ、ふ」  もっとうまく為明を高められればと望みつつ、奥まで呑めない康頼は擦る手をはやめた。 「は、ん……いいぞ、康頼」  ほめられて、ますます励む康頼の菊座から義朝の舌が放れ、かわりに指が押し込まれた。 「んぅうっ、う……っ、は、ああ」  思わず顔を離した康頼の顎が、為明に掴まれる。噛みつくように口づけられて、康頼は為明の首にすがった。 「うっ、んう……ふっ、んううっ、う」  腰を引き寄せられた康頼の尻から義朝の指が抜ける。義朝は為明の陰茎を握ると、その先を康頼の秘孔にあてがった。康頼の尻を支えて深く刺さらないよう気をつけながら、義朝は為明に手淫をほどこす。 「ふっ、んっ、ん、う……っふ」  ヒクつく秘孔の口が為明の先端に吸いついて刺激する。キュウンと奥が切なくうずいて、康頼は自分の反応におどろいた。 (それがしは、為明殿を求めておるのか)  クラクラと揺れる思考が本能を感知する。一度、そこで味わってしまった快楽は肉壁に残り、よみがえって理性を刺激した。 「うっ」  くぐもった為明の息が康頼の喉に落ちて来たと同時に、肉壁が熱に叩かれた。あふれた為明の精を義朝の指が抑えて、康頼の内部に塗りこめる。 「ふはっ、ぁ、ああ、んっ」  義朝は的確に過敏な場所を見つけ出しては、康頼をほぐしていく。為明は康頼の首に吸いつき、義朝の指で準備が整えられるのを待った。 「さあ、康頼」  うわずった義朝の声を耳に注がれた康頼の秘孔に、熱いものがふたたびあてがわれる。義朝の手が康頼の腰にかかり、引き落とされた。 「くはっ、ぁ、あぁああああ!」  貫かれ、のけぞった康頼の背中を義朝が支える。為明が腰を突き上げると、義朝の手がそれを受けて康頼を揺らした。 「んはぁあっ、あっ、は、あああううっ」  初日とは比べ物にならないほどの強い刺激に、康頼は高く甘く吠えた。媚肉と化した康頼の内側は為明の熱にすがり、吸いつき、甘えて絡む。胸の先がジンジンとして、陰茎も刺激を求めて震えている。なにもかもが心地よくて、康頼はわけがわからなくなった。 「はふっ、ぁ、ああっ、あんぅううっ」  髪を振り乱して涙を流す康頼の姿に劣情をあおられた為明は、彼を抱えて揺さぶった。 「ああ、康頼」  官能にゆがめられた為明の苦しげな表情に、ズクンと康頼の心臓が跳ねる。唇がさみしくなって、顔を寄せると深く口を吸われた。 「ふふ……夢中になって」  うれしさに目を輝かせた義朝はふたりを見つめ、着物を落としてしらじらと輝く肌を星明りにさらした。  為明は康頼の呼気を奪い、かき乱しながら激しく腰を打ちつけて己を放った。 「んぅううっ!」  口を吸われながら為明の熱の破裂を受け止めた康頼も、極まりを迎えた。余韻にひたる暇もなく押し倒されて、足を高く持ち上げられたかと思うと、すぐに熱を取り戻した為明に突かれた。 「ぁはぁああっ」 「康頼」  やさしく呼ばれて義朝の指に頬を包まれた康頼は、大きく開いた口に義朝の陰茎を入れられる。 「ぉぐっ、ふ、んむ、ぅっ、うう」  上からも下からも突かれ擦られ、康頼は目を白黒させた。義朝の指が康頼の胸の尖りにかかる。 「んふっ、ぅうっ、ぁはううっ」  内壁の刺激と胸乳への愛撫、口腔の官能に苛まれた康頼は、淫靡に肌をわななかせて強すぎる快楽に涙をこぼした。あふれた唾液を呑む余裕もなく、口の端からこぼす康頼の乱れた姿に、為明も義朝もたぎらせた獣欲を彼へと注ぐ。 「はぅうっ、ぐっ、う……けほっ、は、ぁあ」  息つく暇もなく、今度は体を反転させられ、後ろから抱きかかえられた康頼は、みたび為明に貫かれた。 「はぁうっ、んぁっ、は、はううっ」  大きく開かされた脚の間に義朝が顔を伏せ、翻弄される康頼の陰茎をしゃぶった。 「ひぁあうっ、あっ、あああっ」  刺激に締まった康頼の内壁が、為明を強く絞る。 「くっ」  うめいた為明は康頼の太ももを抱えて、激しく体を打ちつけた。 「あああっ、はんっ、は、はぁあうううっ」  支えを求めた康頼が、腕を背後に伸ばして為明の頭を引き寄せる。顔が近づき、頬を寄せると唇を求められた。 「ふっ、んむっ、う……ふぅ、んっ、んんっ」  鼻にかかった、くぐもった嬌声を漏らす康頼はグズグズに溶けた。もはや自分が、どんな体勢でいるのかも把握できなくなり、嵐にもまれる木の葉のように、ただ与えられる快感におぼれていく。 「はんっ、は、はぁうううっ、はふっ、う、あぁ……あっ、あはぁああ」  何度目かもわからぬ絶頂を迎えた康頼は、やわらかくあたたかなまなざしに包まれて意識を溶かした。

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