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第4話
風が気持ち良くて目を閉じ膝に顔を埋めた
風の音と川のせせらぎ、小鳥の囀ずりだけが僕の世界を埋め尽くした
昔から静かな場所が好きだった。
一人の世界が好きだった
でもみんなが構ってくるからそれなりに人付き合いもしてきた
別に皆の事が嫌いな訳じゃないけど一人の空間はとても居心地がよかった
そんな時間を邪魔する誰か。
「君どうしたの?具合悪い?」
近藤じゃない。誰?
ゆっくり顔をあげると端正な顔立ちをした背の高い男が腰を折って話しかけていた
「いえ。何でもないです。気持ち良くてうとうとしていました」
自分なりの笑顔をその人に向ける。その人が息を飲むのがわかった
「あの…」
「ごめん。何でもないならよかった。俺も隣に座ってもいい?」
「じゃあ僕失礼します」
立ち上がりその場を後にしようとするとその人に腕を捕まれ引き寄せられた
「少しお話ししよう?」
その人の真っ直ぐ射るような綺麗な瞳に吸い寄せられるようにその人に顔を近づけキスをした
「…」
「…」
お互い無言。手は繋いだままで
「あれ…すいません…僕…」
その人も動揺してるのかこちらを不安げに見ていた
「ごめん。俺我慢できなかった…あの…もう一度キスしてもいい?」
たった今会ったばかりの名前もわからないような人の申し出に無言で頷いた
普通なら怯えたりするものだろう、でも…
自分でもわからないような…何だかふわふわした気持ち
お互い引き合うように抱き合いキスをする
先ほどよりも深く甘いキス。
離れていく僕らの唇。
離れることを拒むように二人の間を銀糸が繋ぐ
「あの…俺の恋人になって下さい」
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