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第35話

「ただいま」 久しぶりに言った気がする 先に帰した家族が並んで迎えてくれた 「おかえり」 「忘れ物あった?」 「うん」 「ことり?何かあった?元気ないけど」 流石の九頭竜。いつも何かあれば一番に気付いてくれる兄が昔からとても好きだった 「ん?何でもない」 「恋人の浮気現場にでも遭遇したような顔してるよ」 本当に…この人は…すごいなぁ… 「どんな顔だよ…」 「そんな顔」 「何それ。何でもないよ。人が多くて疲れちゃっただけ」 「そう」 「心配してくれてありがとう」 丁度帰宅したのは午後のティータイムのとき 久しぶりに近藤も来ていてお茶を用意してくれた 「お久しぶりです。ことりさま」 「元気だった?」 「はい。今は九頭竜さまのマネージメント業をさせていただいています」 「じゃあ近藤も一緒に一時帰国?」 「いえ。その頃は私はケイン様の運転手です」 「ケインの?」 「はい」 ケインは父の事務所の稼ぎ頭でモデルだけでなく幅広く活躍をしている今注目の男だ。 幼い頃ケインも日本に暮らしていて良く遊んだものだった。 父の能力に引き付けられ両親の反対を押しきり父の事務所に入った ケインはどちらかというと大人しく人見知り。だから心配されていたけど仕事をすればするほど天性の才能が発揮されて今の地位まで上り詰めた。 当の本人は相変わらずだが 「ケインのご指名でね。どうしても近藤がいいと言ったものだから」 「そっか」 そしてケインは幼い頃から近藤に焦がれている。 「近藤。気を付けなよ。ケインの気持ち知ってるんでしょ?その気がないなら期待させないであげてね」 苦笑した近藤は紅茶とお茶菓子を置きいつもの立ち位置に戻ってこちらを眺めていた。 近藤も案外満更でもないのかもしれない。

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