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待ち合わせ場所に着くと既に糸島はいて俺の姿を見つけると犬みたいににこにこしながら走ってきた
「先輩!」
「ごめん!待たせた?」
「今来たとこです」
うわっ!デートっぽい…嬉しい!
「行こっか」
無意識に手をとっていた
「先輩?」
「ん?」
「えと…何でもない…」
手を繋いだこと気付いたのは家についてからだった
「あちゃ…ごめん!気持ち悪かったよね?ごめんな」
「いいえ!大丈夫」
心なしか顔が赤い気がする
「糸島?」
不思議に思って屈んで見つめる
「先輩…近い…です」
「…っ…ごめ…っあ!」
慌てて離れようとしたら糸島が足を縺れさせて俺の方へ倒れ込んできた
小さな体が俺の腕にすっぽり収まってパズルのピースが合わさったみたいにかっちりと来た…やばい…離したくねぇな…
「先輩!ごめんなさい!!」
慌てる糸島を抱き締める力を強くする
「糸島…いやなら殴ってでも逃げて」
綺麗に色づいた美味しそうな唇に己のそれを重ねた。柔らかい感触…溢れてくる想い達…
うっとりする糸島の視線…もう…我慢ならない…糸島を抱えて寝室へ向かいベッドへ縫い付けた
「頼むから…止めて…俺のこと…」
「…嫌です」
「え?」
「俺…先輩と…特別な関係になりたい…好きなんです…ずっと…入学式で出会ったあの日から…だから…好きにして?」
「…っ…ごめ…俺…何やってんの…悪かった…」
「先輩…」
「ごめん…」
「すいません…気持ち悪いですよね…帰ります…ごめんなさい!」
「だめ!帰さない」
もう一度背中から糸島を抱き締め膝に座らせた
「順番間違えてごめん。俺ねお前の涙に惚れちゃったみたい…この間の目にごみが入ったときの涙目…昨日の電話の涙声。そして今羞恥で震えて流してる涙…」
ポロポロとこぼれ落ちる透明の滴を指で掬う
「初めて会ったときの泣き顔だって鮮明に思い出せる…俺あの時水無瀬が好きで…でももし水無瀬がいなきゃあの時からお前のこと好きになっていたかもしれない」
背中越しに抱き締めていた糸島を抱き直し向い合わせにする。距離が近すぎて照れる。でも伝えなければ…
額を合わせて見つめる
「糸島…俺…お前が好き…俺のパートナーになってくれますか?」
「はい…」
今度は糸島から可愛いキスのお返しがきた
「…たまんねぇ…何でそんな可愛いの?」
「エッチ…します?」
「おまっ!!やめろって!!早いって!!初めてじゃないの?」
「いえ…初めてです…でも…先輩と…先輩…あの頃沢山その…」
水無瀬のことがうまくいかなくて高校時代は確かに遊んでた。学校の生徒も先生達とも寝たことはある。多分そういうので俺は有名だったはず…
「…だから…えと…」
「ばぁか!本気の相手にゃ俺だって臆病になる。初めては痛いよ?だから焦んなくて良い。ゆっくりね」
「…いやです」
「こんっの…ばか!…」
「先輩…抱いてください」
「んもぉ!知らねぇぞ!」
再度ベッドへ押し倒し丁寧に全身を撫でる。撫でる度可愛い声が漏れてきてたまらない…このまま繋がりたい…
でも…固く固く閉じた蕾をこじ開けるのは憚られた。そっと触れる度苦しそうな顔をするから…だから…
「今日は抜き合うだけ…ね?」
そうして一纏めにしたお互いの猛りを扱く速度を早める。先に弾けた糸島に続いて俺も欲を放った。艶っぽい顔で息を荒くした糸島はいつも以上に色香を放っていて正直ギリギリの理性で荒ぶる己を沈めた…それなのにまた…
「先輩…いれない?…俺じゃだめ?…なの?」
「うわぁ!もう!泣くなよぉ!可愛いけど…違う。怪我させたくないからゆっくりならすの。正直昔はそんなの気にしないで無理矢理突っ込んでたけど…でもさぁ。好きな人だよ?怪我させたくないし一緒に気持ちよくないといやだ!だから時間かけてでもやる!ね?だから…時間頂戴?だめ?沢山ここに会いに来て?来る度ゆっくり…ね?」
「せんぱーい…」
「んもう!!可愛いな!おい!離したくねぇな…」
「離さないで…俺のこと…」
「うん。よっし…飯食うか!作っといたんだ。お前の口に合えば良いけど」
空気を変えようと敢えて少しだけ声色を変えて言うと大人しく頷きホッとしてリビングへ行き冷たくなった食事を暖め直して座らせる。
「「いただきます!」」
キラキラした目で頬を膨らませながらもくもくと食べる姿…うん…可愛すぎ…
「しぇんぱい」
「口にいれたまましゃべんな。もう!溢してるじゃん」
口許から零れたものをそっと掬い自らの口へ運ぶ
「ふえっ!せんぱ…それ」
「ん?あ?うん。旨かった」
「もう!もう!!」
「あのさぁ。お前そんなキャラだったんだな。お高く止まってる高貴な人なイメージだったから」
「…すいません…嫌でした?嫌いになりました?」
「んも!またそゆこという!!もっと自分に自信持ちなさい!俺はそんな姿が知れてさいっこうに嬉しい!可愛いなぁって思うんだから!」
「ありがとうございます…あの…先輩」
「それと…先輩とかやだ…名前で呼んで?左近」
「隼人…さん」
真っ赤になりながら言う左近が可愛い
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