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失った光(3)

 だって、優しくて社交的で明るい父さんは亡くなる直前まで微笑んでいた。 僕が不安がっている時は側に寄り添ってくれた。  それなのに僕は――……。  僕は僧侶さんがまだお経を読んでいるのにもかかわらず、失礼も承知で腰を上げ、席を外した。  久しぶりに村のみんなに会っても思い知らされるのは、やっぱり誰にも受け入れてくれないという事実だけ。みんなが僕を白い目で見て、父さんが可愛そうだとそう言うだけ……。誰も僕に悔やみの言葉のひとつさえ、かけてくれない。 「父さん……」  天国にいる父さんは、今の僕を見ているだろうか。縁の下におりて広い庭へと足を運び、空を見上げても、シトシトと降る雨はやっぱり止む気配さえない。真っ黒な黒雲しか見えなかった。  そんな中で、僕は目の前にある大きな大木に隠れるようにして、そっと腰を下ろした。集団から抜け出てひとりになると、みんなの前では流すことを許さなかった涙が頬を伝って流れていく……。  泣きながら思い出すのは、父さんと過ごした苦しいけれど楽しい日々だった。  みんなが言うとおり、清人さんは僕の実の父親じゃない。それなのに、彼は僕を実の子供のように育ててくれた。  ――それは、今日のような雨がシトシトと降る日だったらしい。  僕の義理の父親、清人さんは、普段あまり通らない山道をたまたま歩き、道端に捨てられていた当時一歳くらいの赤ん坊の僕を拾い、育ててくれた。なんでも父さんは僕を拾うその二ヶ月前に奥さんを亡くされ、命の尊さをあらためて知ったそうだ。

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