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失った光(2)

「ねぇ、聞いた? なんでも、清人さんが亡くなられる直前まで、あの子が傍にいたそうじゃない?」 「イヤねぇ、あんな、どこの子かさえもわからない子の面倒を見たばっかりに、清人さんはお亡くなりになったのよ?」 「ご家族の方は皆さん反対していたようじゃない? それを、清人さんは律儀というか、目が合ったって、たったそれだけで拾い、育てていたんでしょう? 清人さんもお人好しよね」 「でも、酷いわよねぇあの子。恩を仇で返すなんて」 「ちょっと、もうそれぐらいにしておいた方がいいわ。でないと、あの子に呪い殺されてしまうわよ?」 「…………」  ――呪い殺す。  普通ならばできるはずのないことだけど、もしかすると僕にならできることかもしれない。たたかれた陰口に、自分でも(うなず)いてしまいそうになる。  この陰口と突き刺すような視線は今にはじまったことじゃない。これは僕が五歳になった頃から絶えずあったモノだった。  それは黒とは決して言い難い灰色に近い髪の色と、日に当たらないために、真っ白い日焼け知らずの肌を持つ、人間離れした容姿。そして、常人にはない体質が関係しているからだ。だから今さらどうこうしようとも思わないし、陰口は当然だと自分でもそう思う。  ……だけど、父さんが亡くなったこんな時にさえも、向けてくる冷たい視線は正直苦しい。でもそう思うのはけっして許されないこと……。みんなの反応はそうあって当然だ。だから仕方ない。

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