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幻実。(4)

 ――この村は狭い。とても小さな村だ。今夜のこの出来事はきっとすぐにでもみんなの耳に入るだろう。そうなれば、僕はみんなに拒絶される。  ううん、違う。拒絶されるだけなら、まだマシかもしれない。僕はまた、捨てられるのだろうか……。  その恐怖が幼い僕を襲ったのを今でも覚えている。  僕は自分の事を容姿以外はみんなと変わらない、普通の人間だと思っていた。実の両親は容姿がおかしいっていうだけで僕を捨てたのだと思っていた。だけどそれは違った。実の両親が僕を捨てた理由は、きっとこのことだったんだ。  だから僕は、僕を捨てた実の両親を恨んではいけない。そう、自分に言い聞かせ続けた。僕が、奏美さんを襲ってしまったその日から、ずっと……。  それからというもの、和夫さんたちが僕を見る目は変わった。僕が恐れていたことが現実になったんだ。  間もなくしてこの人口が少ない村の人々に、僕の体質のことが知れ渡った。僕は村のみんなから怖がられた。ただ、ある人間を除いては……。  ――そう、僕を拾った清人(きよひと)さんだけは、先が短い老いぼれだからと、そう言って、僕を見捨てなかった。それがどんなに心強かっただろう。僕はけっして、ひとりきりじゃないと――愛されているのだと、そう思えた。  だけど、僕を取り巻く運命はみんなから拒絶されるようになってからどんどん過酷になっていった。

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