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幻実。(7)
もしかすると、父さんは僕の身代わりを買って出たのかもしれない。僕の代わりに犠牲になったから、倉橋さんと出会って以降、僕の霊媒体質が軽減したんだ。
僕はどこまでも他人を不幸にする。僕が生きていれば、誰かを犠牲にしてしまう。だからといって、僕がこの世を去っても同じこと……。汚れた魂を手に入れた霊体は実体化して、誰かを恐怖に陥 れる。僕はどこにいたって、みんなを不幸にする存在なんだ。
……いっそのこと、どこか人がいない場所に行ってしまいたい。だけど僕の細い足じゃ、どこにも行くことができない。それに、僕の身代わりになってくれた父さんがいなくなった今、僕の体質が以前と同じレベルになることもわかっている。きっと食べることもできなくなるだろう。
もし、仮に僕がここから出て行ったとしても力尽き、のたれ死ぬのがオチ。僕は死んでもいけないし、生きていてもいけない存在なんだ――。
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