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運命の糸。(2)

 僕は何もする気も起きなくて、椅子に座ったまま明けていく空を見つめていた。すると天井からガタゴトと物音が聞こえてきた。  天井にネズミがいてもおかしくはない。だけどこれはそういうモノじゃない。だって物音はネズミよりもずっと大きい。この音は昔、嫌というほど聞いていた……。  僕は背筋が凍っていくのを感じながら何も感じていないふうを装って、身動きひとつしなかった。  恐怖を感じていると相手に知られてはいけない。知られれば、『彼ら』はさらに僕を追い込んでくる。でも何も感じないふりをしていても結果は同じ。さらなる恐怖を僕に与えてくるから……。  結局、僕がどうしようが結果は同じなんだ。  僕は両手に拳をつくり、これ以上恐怖を感じないよう唇を噛みしめる。  窓の外では朝焼けが見える。  はじめは小さい物音だったのに、少しずつ音が大きくなり、家全体がまるで地震がやってきたかのように震え出した。  そうなると、僕はもう我慢なんてできない。  この広い家には僕ひとりだけ。僕を絶望へと駆り立てていく。  もう誰も、助けてはくれないんだ……。 『そうだよ、おにいちゃんはひとりぼっち』  言い知れない孤独感に覆われていると、どこからか女の子の声が聞こえてきた。  この声は昨夜も聞いた。 『ねぇ、いっしょにいこうよ。たのしいよ?』  おかしい。僕の身体なのに、足が勝手に動き出す。  それに、さっきまであんなに死ぬのが怖かったのに、『死』という言葉が頭の中に浮かぶんだ。

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