『そうだよ、ひとりぼっちはいやでしょう？　わたしとあそぼう』 　僕は女の子の声に誘われるまま、歩き始める。 　……父さんはいなくなった。 　……僕はひとりぼっち。 　僕は心の中で何度も繰り返す。 　その間にも僕の足は階段を下り、玄関の戸口を開ける。真っ白い太陽の光が僕を照らした。いつもなら、太陽の光が眩しいと感じるけれど、今日は何も感じない。僕は素足のまま、砂利道を行く。 　そうすると、僕の腰あたりくらいの背をした黒髪の少女が見えた。年齢は小学三年生くらいだろうか。血のように赤いワンピースを着ている女の子の顔は青白く、だけど昨夜見た時のように血は飛び散っていない。目は大きくて、ちょこんと真ん中に乗っている鼻は愛らしい。表情はひとつも微笑みはしないけれど、怒ってもいないように感じる。無表情そのものだった。 『こっち、こっちだよ』 　女の子は手招きをして導く……。 　僕はまるで操り人形のよう。女の子に誘われるがままだ。 「…………」 「あ～、今日も学校あんのかよ。ダリ～」 　どれくらい進んだだろう。後ろから女の子以外の声が聞こえて、立ち止まった。 『どうしたの？』 　女の子は弧を描く眉根を寄せて尋ねてくる。僕は答えず、そのまま声がする方へと振り向いた。 　背後には僕と背と同じくらいの高さをした深い緑色の草が茂っている。声のする方へゆっくり近づき、誰にも見つからないよう、深い緑色の草をごんの少しかき分けた。 　目を凝らし、覗き込むと僕と同い年くらいの子だろうか。茶色い制服を着た男の子と女の子がいた。