25 / 253

運命の糸。(5)

 孤独に怯えた臆病な僕は導かれるがまま、進んでいく……。  僕は自分のことしか考えられない汚い人間だ。 『そうだよ、おにいちゃんはきたない。ねぇ、おにいちゃんは、さっきなかよくおしゃべりしていた、おにいちゃんとおねいちゃんを、なんておもったの?『じぶんはこんなにくるしいのに、どうしてあなたたちはわらってるの?』ってそう、おもったんだよね』  ……女の子が言ったこと。それは図星だった。  僕はいつだって孤独なのに、どうして同年代のあの子たちは幸せそうに笑っているんだろうと、そう思っていた。 『にくいよね、みんな、ひどいよね。おにいちゃんが、こんなにくるしがっているのに、だれもたすけてくれないなんて……』  そうだ。みんなひどい。どうして僕だけがこんな思いをしなきゃいけないの? 僕だって、みんなと同じ人間なのに……。  僕の心が、しだいに黒へと染まっていく――。  そして……。  けたたましい車のブレーキ音が僕の耳に入った。  そこで僕は自分が道の真ん中で立っていることに気がついたんだ。前からはトラックが勢いよく突っ込んでくる。  ああ、僕は死ぬんだ。  目を閉ざし、楽になる瞬間を願った。僕が目を閉じる寸前、女の子が笑っているのが見えた。  大きな鉄の塊がすぐ目の前まで迫った。その時――……。  僕の手が、突然後ろへ引っ張られたんだ。  体力が落ちている僕の身体が傾く。  地面に打ち付けられるのを覚悟して唇を噛みしめる。だけどおかしなことに、僕の身体は少しも激痛を訴えてこなかった。僕は倒れなかったんだ。

ともだちにシェアしよう!