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運命の糸。(5)
孤独に怯えた臆病な僕は導かれるがまま、進んでいく……。
僕は自分のことしか考えられない汚い人間だ。
『そうだよ、おにいちゃんはきたない。ねぇ、おにいちゃんは、さっきなかよくおしゃべりしていた、おにいちゃんとおねいちゃんを、なんておもったの?『じぶんはこんなにくるしいのに、どうしてあなたたちはわらってるの?』ってそう、おもったんだよね』
……女の子が言ったこと。それは図星だった。
僕はいつだって孤独なのに、どうして同年代のあの子たちは幸せそうに笑っているんだろうと、そう思っていた。
『にくいよね、みんな、ひどいよね。おにいちゃんが、こんなにくるしがっているのに、だれもたすけてくれないなんて……』
そうだ。みんなひどい。どうして僕だけがこんな思いをしなきゃいけないの? 僕だって、みんなと同じ人間なのに……。
僕の心が、しだいに黒へと染まっていく――。
そして……。
けたたましい車のブレーキ音が僕の耳に入った。
そこで僕は自分が道の真ん中で立っていることに気がついたんだ。前からはトラックが勢いよく突っ込んでくる。
ああ、僕は死ぬんだ。
目を閉ざし、楽になる瞬間を願った。僕が目を閉じる寸前、女の子が笑っているのが見えた。
大きな鉄の塊がすぐ目の前まで迫った。その時――……。
僕の手が、突然後ろへ引っ張られたんだ。
体力が落ちている僕の身体が傾く。
地面に打ち付けられるのを覚悟して唇を噛みしめる。だけどおかしなことに、僕の身体は少しも激痛を訴えてこなかった。僕は倒れなかったんだ。
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