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運命の糸。(7)
だからだろう。人肌を感じてしまった僕の瞼 が、少しずつ下りる。
眠らないのにも限界というものがある。僕は、自分が置かれている状況も考えられず、目を閉ざしてしまいそうになる。
ふとさっきまで女の子がいた方向を見ると、そこにはもう誰もいなかった。
(……よかった)
ひとまずは霊体はいなくなった。
きっとあの子は僕がひとりじゃなくなったから諦めたんだろう。
ほっと胸を撫で下ろす。だけど眠っちゃダメ。眠ればまた違う霊体が僕を狙う。そうなれば、僕はまた誰かを手にかけてしまう。今度の標的は、助けてくれたこの男の人になるかもしれないんだ……。
僕は眠気から逃れようと、閉じそうになる瞼を必死にこじ開ける。だけど瞼は鉛のように重たくて、なかなか開いてくれない。
「いいよ。大丈夫だから安心しておやすみ」
男の人の優しい吐息が、僕の頬に当たる。
――ダメだ。眠るという誘惑には勝てそうもない。
……そして、僕はとうとう目を閉ざしてしまった。見ず知らずの、綺麗な人に誘われて……。
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