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優しい手のぬくもり。(5)

「君が――」  ずっと近くから聞こえた声にびっくりして見上げれば――男の人に抱きしめられていたんだ……。 「君が今までどう生きてきたのかは理解することは難しいだろう。だけど少なくとも、わたしの目に写る君はとても美しいと思うよ」 (うそだ!) 「違うっ! 見た目でもわかるでしょう? 僕の髪は、ほら。焼けた後の灰みたいな、汚い色をしているっ!!」  僕は、男の人の腕の中でブンブンと頭を振って、汚らしい灰色の髪をひと房握ると、痛みを無視して強く引っ張った。 (……怖い。さっき会ったばかりの人に、気持ち悪いと肯定されるのが怖い)  だけど本当のことだから仕方ない。  僕は唇を噛みしめ、何を言われてもいいように覚悟して、下を向く。  そうしたら指が伸びてきて、僕の顎をそっと持ち上げたんだ。  汚いと肯定される言葉を聞きたくない。でも抱きしめられているから身動きが取れない。おまけに、顎を固定されているから顔も()らせなくて……。だから代わりに、ギュッと目をつむる。 「そうかな? わたしには君の髪がプラチナブロンドのように見えるけれど?」 (………………え?)  何か僕とは無縁の言葉をかけられたような気がする。  つむっていた目を恐る恐るゆっくり開けていくと……。 「なめらかな長い髪はまるで絹のようだね。思わず口づけたくなるほど美しい」 「へ? あっ、あのっ!!」 「漆黒の瞳は黒水晶のように水気を含む光を放っている。ひとたび君の瞳に入れば、どんな物でもすべてが宝石のように輝く」

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