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優しい手のぬくもり。(7)

 男の人との距離が近づくほど……意識すればするほどに、薔薇の甘ったるい匂いは強くなっていく。――まるで僕の脳内すべてを支配していくような、そんな強い香り……。 「……んっ」  やだっ……何か、変な声出た。 (恥ずかしい!!)  あまりの恥ずかしさに、僕は自分の髪を引っ張るのをやめて、男の人の袖を掴んだ。 「とても美しい」  心臓はバクバクいってるし、胸がギュって締めつけられる。  そして……。  ぎゅるるるるるるる。  ……鳴ったのは、僕のお腹の虫でした。  その瞬間、あんなに動けないと思っていた僕の両手が動いた。お腹を押さえて、できることならお腹が鳴らなかったことにしてほしいとお願いする。  だけどそんなことはやっぱり無理で――。男の人にはきちんと聞こえている。  どうしてこういう時にかぎってお腹が鳴るんだろう?  ……って、そもそも、こういう時って何!? 僕は何を期待していたんだろうか?  あまりの恥ずかしさに顔が熱くなっていくのが自分でもわかる。今度こそ男の人から顔を逸らして俯ける。 「ご、ごめん……なさい」 (恥ずかしすぎるっ!)  謝罪する声は小さくなっていく。  だけどやっぱり男の人の表情が気になって、目線だけを上げると……男の人は目を見開いて、さっきまで弧を描いていた唇は半分開いていた。 (呆れられてるっ!!)  そう思ったんだけどそれも一瞬のことで、男の人はにっこりと微笑みかけてくれた。

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