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優しい手のぬくもり。(11)
(あ、もしかして!)
この人も倉橋 さんと同じ霊媒師なのかな。
だったら、霊体を遮断することもできるかもしれない。
「あ、あの……」
僕が口をひらくと、男の人は首を傾げた。躊躇いがちに話す僕の言葉を急かすことなく待ってくれる。
(ああ、父さんと同じだ……)
(優しい人――)
目の前にいる男の人が父さんの面影と重なった。
切なさで胸がいっぱいになる。
「あなたは……」
続きを言いかけて口を閉ざしたのは、何の面識もないのに、『貴方は霊媒師ですか?』なんて訊けないと思ったからだ。
こんなことを訊いてもし違っていたなら、とても失礼な奴だと思われるかもしれない。
嫌われてしまう……。
父と似た雰囲気の男の人に嫌われるのは、とても悲しい。
だけど、言わなければ何もわからないままになってしまう。それに、さっき会ったばかりの人だし、僕とは接点はない。別に嫌われてもいいじゃないか。
ーーそう自分に言い聞かせるのに、だけどやっぱりこの人に嫌われたくないと思ってしまう……。
複雑な思いを抱きながら、一度閉ざした唇をもう一度開け、言葉を紡ぐ。
「あなたは霊能力者ですか?」
「え?」
「あ、あの……僕……実は……霊媒体質で……」
ここまで言って口を閉ざしてしまう。
だってこの人は僕を綺麗だと言ってくれたけれど、体質のことを話せば、やっぱり気持ち悪いって、そう思われるだろうから。それが、ものすごく怖い。
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