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優しい手のぬくもり。(13)
僕は決意して、膝に力を入れた。
立ち上がろうと腰を上げた瞬間、男の人が僕の両肩を掴んだ。
「帰さない」
「えっ!?」
(なにっ?)
今まで笑顔だった男の人の表情は変わらないんだけど……なんだろう。スッと目を細めて、僕を見つめてきた。たったそれだけでも僕の心臓が跳ねた。掴まれた場所から熱が生まれる。
「あっ、あの……?」
どうしていいのか戸惑ってしまう。だって、僕の厄介な体質については、あらかた話した。いくら有能な霊媒師でも、この退室はとても厄介だ。彼もまた、きっと僕を拒絶する。そう、思ったのに点…。
(この人は僕を拒絶しない?)
(……うう、どうしよう)
僕は今の今まで厄介者扱いだった。
『帰さない』なんて言われたことが無かったから、何て答えればいいのかわからない。
僕はしばらくの間黙ったまま、男の人の顔色を窺っていると、男の人は微笑みながら首を傾けた。
「……って言ったらどうする?」
「えっ、あの……」
(――えっ? もしかしてさっきのは冗談?)
「…………」
(…………そう、だよね)
僕を必要としてくれるわけがない。僕を受け入れてくれる人なんて、いない。
他人を傷つけて、父親さえも殺した心も穢れた汚い僕。
人様に必要としてほしいなんて思っちゃいけないことだ。
人を不幸にする僕は、そんなことを思う資格なんてない。
だから僕はにっこりと笑い返した。
たとえ嘘だとしても、僕を受け入れてくれる言葉をかけてくれて、ありがとう。そういう意味を込めて……。
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