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優しい手のぬくもり。(15)
頭がクラクラする。
それに……どうしてだろう。薔薇の香りを嗅いでいるとみぞおちがムズムズする。
(ううん、それだけじゃない)
心臓だってドキドキしている。綺麗な人から美しいなんて言われたら誰だってこうなってしまうよね?
ドキドキ煩 い心臓を止めるため、僕はベッドに横たわり、枯れ枝みたいな細い腕で、自分の身体を抱きしめた。
肌触りのいい、真っ白なシーツが頬に当たる。
(そういえば、ふかふかの布団にくるまれて横になるなんてすごく久しぶりだ)
僕はこれまで父が亡くなってからというもの、布団に入ることを禁じていた。
ここだと――あの人の側だと、僕は霊体に悩まされずにすむかもしれない。
思わぬ休息を手に入れた安心感からか、瞼は勝手に下りる。心地良い眠気に誘われた。
呼吸をするたびに香ってくる薔薇の甘い香りを嗅ぎながら、僕は誘われるままに目を閉じた。
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