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悲しみと苦しみと。(4)

(あれ? 僕……) 「比良くん? 大丈夫?」 「あ……」  僕は恐怖で震える唇を動かし、紅さんを見上げた。  あたたかなクリーム色の天井。レースのカーテンが、窓から入ってくる風に揺れ、さっきの恐ろしい光景とは打って変わって、とても穏やかだ。 (さっきのは……夢?) 「くれな……い……さ……」  紅さんに、さっきのことは夢の中の出来事だったのかと尋ねようとすれば、声は掠れ、震えていた。 「大丈夫、もう平気だからね」  目尻に伝う涙を、紅さんが拭ってくれる。僕の肌に当たった紅さんの手はあたたかで、冷えきった身体に熱が浸透していく……。 『大丈夫』 『もう平気』  まるで紅さんには僕の身に起こった出来事をすべて知っているような口ぶりだ。だからかな……。  目の前にいるのが紅さんだってわかったら、視界がぐにゃって曲がった。  ――父さんは、僕を恨んでいる。  ――父さんは、僕を、拾ったことを後悔している。  そう思うと、僕の中にあった感情がブチンって切れた。 「くれないさ……っ。うわあああああっ」  そして、僕はとうとう紅さんにしがみついて、小さな子供みたいに大声を上げて泣いてしまうんだ。 「うあああああああっ!!」  泣いて、泣いて……泣きじゃくって……。  いったい、どれくらいの時間が経っただろう。  紅さんは僕が泣いている間、ずっと背中を(さす)ってくれていた。
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