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悲しくて苦しくて。(11)

 甘い薔薇の香りに何も考えられなくなった頭を無理やり回転させようとする。だけどやっぱり、薔薇の香りには勝てなくて、視界は薄ぼんやりとしてしまう。 「くれなぃさぁん……」  声まで甘えるような、猫なで声みたいなマヌケになっているし……。 「比良は、わたしを惑わすのが上手いね……」 「ひ、ぁっ……」  僕の首筋に、やわらかい感触がした瞬間、僕の身体がビクンと震えた。 (また、ヘンな声が出た)  僕は慌てて口を塞ぐ。これ以上、醜態をさらすわけにもいかない。僕は紅さんから離れるため、勢いよく立ち上がる。その直後、僕の身体が傾いた。  モコモコのカーペット目がけて、身体が突っ込む。 (倒れる!!)  痛みがやって来るだろう衝撃に耐えるため、ギュッと目をつむる。  だけど……。 「比良、危ないっ!!」  紅さんの声が聞こえてそっと目を開けると、そこには……。  目尻を下げた紅さんが、僕を見下ろしていた。  崩れ落ちる僕の身体を、紅さんは支えてくれたんだ。  しばらく何も考えられず、硬直状態でいると……紅さんは、今度は眉尻を上げていた。  なんだか怒ってるみたいだ。  僕があまりにも間抜けだからだろうか。  そう考えると、胸はズキリと痛む。  もう、誰にも嫌われたくないって、僕の身体が雄弁に語っている。 (無理なのに)  そんなこと、有り得ないのに……。  僕が生き続けている限り、誰もがみんな僕を()み嫌うのに……。

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