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悲しみと苦しみと。(13)
「……パラレルワールドというものはね、器の中にある脳の状態によって決まるんだ。もし、器が正の感情、つまりは喜びや楽しいといった気持ちがあるならば、魂はそういうパラレルワールドへ進む。だが、もし、器が負の感情を抱いていれば、マイナスのパラレルワールドのみにしか魂は進めないんだ。だから比良くん、君が見たアレは、君のお父さんではない。何より、奴が放っていた波動は人間のものではなく、異物そのものだったからね」
(紅さんが言うように、夢の中のあれは、父さんじゃない?)
(本当に?)
紅さんの言ったことが本当なのかを知るため、視線を逸 らさずにいると……。
ニッコリと微笑まれてしまった。
「わたしが気を抜いたのがいけなかったね。約束する。今後一切、君を傷つけさせはしない」
その言葉はまるで、僕は、『これから紅さんとずっと一緒』みたいな言い方だ。
それはとても甘い誘惑。すごく、くすぐったい。
こんな僕でも、受け入れようとしてくれるのが嬉しい。
口元がゆるむのが自分でもわかる。
きっと、今の僕はものすごく間抜け顔をしていることだろう。
「身体が汗でベトベトだ……。さ、お風呂に入ろう。実はね、もう沸かしていたんだよ」
そう言って、紅さんは僕を抱え上げた。
身体が宙に浮く。
「く、くれないさんっ!?」
(これって、これって、お姫様抱っこ?)
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