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紅さんとドキドキバスタイム(2)

 薔薇の匂いは簡単に僕の思考を奪っていくし、髪を洗ってくれる手はすごく優しくて心地良い。身体の力が抜けていきそうになる。  でも……。 「比良、肩の力抜いて? ずっとそのままだと疲れてしまうよ?」  タオルを離さない僕とは違って、タオルを腰に巻いただけの紅さんはクスクス笑う。  そのたびに、僕のうなじにあたたかい息が当たって、こそばゆい。だからさっきよりも余計に身体に力が入る。  肩が縮こまってしまうんだ。男同士だし、別に見られても大丈夫だとそう思うのに、どうしてかな。  紅さんに裸を見られるのが恥ずかしくて、タオルですっぽりと包み込む。    でも、それもそうかもしれない。だって紅さんはすごく綺麗なんだ。  青白い肌をした貧相な身体の僕とは違って、紅さんの肌はとても健康的な象牙色をしている。それに彼の身体には余分な脂肪がない。細身なのに身体は引き締まっていて、筋肉もあって。肩や背中が広い。やっぱり男の人なんだなって思う。 「――」  僕とは全然違う。 「比良?」 「っつ!! やっ」  つい考え事をしていたから、紅さんは不思議に思ったのかもしれない。僕の耳元で(ささや)いた。  おかげで、ヘンな声が出てしまう。僕は慌てて口を両手で隠した。そうしたら、紅さんはまた、にっこりと微笑んだ。 「今からシャンプーを流すからね。熱かったら言ってね」

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