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紅さんとドキドキバスタイム(3)

 あたたかい息が、僕の耳を直撃する。  そのたびに、僕の身体はビクンと震えてしまう。  口を押えていなければ、さっきみたいにおかしな声を出してしまいそうになる。だから僕はコクコクと何度も頷いて、紅さんに意思表示をした。  頷く僕を見たんだろう紅さんはシャワーに手を伸ばした。  汚い僕の髪を流れるお湯は熱くもなくぬるくもなくでとても気持ちが良い。僕はうっとりと目を閉じた。  そうするとより感じるのは紅さんの手の感触。すごく優しくって、僕にはもったいないくらいだ。  そうしたら目頭が熱くなって、涙が出てきてしまう。  汚らわしい僕はこんなに良くしてもらう資格なんてない。 「比良?」  泣いていたのがバレたのかもしれない。  泣き声なんて漏らしてないのに、紅さんはとても敏感だ。  僕は泣いていちゃいけないと思って、手の甲で乱暴にゴシゴシと目を(こす)った。  そうしたらね、僕は馬鹿なんだ。髪に付いていたシャンプーの泡が手についていたことを忘れていたんだ。その手で目を擦ったから目がキリキリと痛みだす。 「っつ……」  痛い。  シャンプーが目に入って痛い。  優しくされすぎた胸が痛い。  心が……痛い。 「比良? ああ、シャンプーの泡が目に入っちゃったんだね」  紅さんの声が、僕の左耳から聞こえた。  僕は痛む目をなんとかしようと、また、懲りずに目を擦る。 「比良、そんなことをすると、余計に泡が目に入るよ……」  紅さんの優しい声が吐息と一緒に耳に入ってくる。

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