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紅さんとドキドキバスタイム(4)

――――」  やめてほしい。  こんなに優しくしないでほしい。  僕は汚らわしい存在なんだ。  だから僕はブンブンと頭を横に振って、ゴシゴシと目を擦る。  目は、痛くて、痛くて、開けられない。  ポロポロと涙が流れ出る。  この涙は、泡が目に入って痛いのと、優しくされすぎて、胸が痛いという涙だ。 「比良……」  ぐいっ。 「!!」  突然、乱暴に目を擦っていた手を掴まれた。それとほぼ同時に頭ごと身体がトスンと音を立てて、あたたかくて硬い何かに押し付けられた。  僕が押し付けられた、『あたたかくて硬い何か』っていうのは弾力があって耳にはトクン、トクンと優しい音が響いてくる。  きっと、紅さんの胸だ。  そうしたら、湿っている布かな? 僕の目に当ててくれた。 「比良、手をここに」  僕の泡がついた手を紅さんの手が導き、お湯の中に入る。 「もう片方も」  紅さんの手が、僕の手を洗うと、もう一つの手もお湯の中に入れるよう誘った。 「ここでお湯を(すく)って目を洗いなさい」  トクン、トクン。  紅さんが指示を出すごとに、僕がもたれている紅さんの胸から音が聞こえる。  あたたかな心音を聞きながら、僕は紅さんの指示通り、両手でお湯を掬って目を洗っていく。 「どう? 痛みはない?」  たかが泡が目に入ったくらいで悲しそうに話す紅さんはとても心配性なのかな。  何回も目にお湯をかけていると、次第に痛みも消えていった。  ゆっくり目を開けると、そこには眉根を寄せた紅さんの顔が間近にあった。

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