「もう少し？」 「紅さんと、こうしてほしいなって……」 「比良？」 「っつ、ごめんなさいっ！！　やっぱり、なんでもないです！！」 　恥ずかしい。 　消えてしまいたい。 　慌てて紅さんの膝から腰を浮かせた直後――。 　グイッ。 「わわっ」 　腕が引っ張られた。 　また――紅さんの腕に包まれた。 「比良は、甘えん坊さんだね」 　クスリと笑う息が旋毛(つむじ)に触れる。 　紅さんが笑うとその振動が胸から僕の顔に伝わる。 　どうして？ 　なぜ、紅さんはこんなにまで優しいの？ 　今日、はじめて会ったばかりなのに、どうして……。 　紅さんは、優しすぎる。 　僕は両手を伸ばして紅さんの広い背中にまきつけた。 　しっとりと濡れた背中はすごく滑らかで、あたたかい。 　僕は目をつむり、ただひたすらこの時間が続けばいいのにって思った。 「……比良。君は可愛すぎる」 　どこか困ったようなそんな笑い声が聞こえて見上げると、紅さんの優しい赤茶色の目と交わった。 　……たったそれだけ。 　なのに、どうして？　胸の奥がジクジクする。 　みぞおちの部分が……熱い。 「比良……」 「んぅっ……」 　紅さんが僕の名前を呼ぶと、また、おかしな声が出てしまった。 　どうして？ 　なぜ？ 　頭の中が混乱するのに、僕の手は紅さんの背中にしがみ付いて離れない。 「比良……そのまま……ね」 　紅さんの腕が僕の身体にまとわりつけていたタオルを取り除く。 「えっ！？　やっ、だめ！！」