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悪夢。(3)
ペロリ。
「っはぅっ!!」
僕の唇に滑らかな何かが当たった。
(なに? なになになになに!?)
怖くて、でも、口に何が当たったのか気になって、僕は薄眼を開けた。
そうしたら、目の端っこに銀色の物体が見えたんだ。
(えっ? 銀色?)
だって今まで、霊体でそんな綺麗な色は見たことが無かったからだ。
不思議に思って、怖さよりも興味の方がわいてしまった。
(いつも臆病なのに、ヘンなの)
自分自身、不思議に思いながら、目を開けていくと……目の前には……。
ルビーのような赤い瞳をした……大きな銀色の狐がいた。
「あ……」
思わず声を出してしまったのは、この狐を見たことがあったからだ。
父さんが亡くなった直後、女の子の霊体に追いかけられていた時に見た狐。
とても綺麗な月夜に輝く銀の毛並みを持つ狐。
(もしかして……)
(もしかして…………)
「お前が……さっきの霊体から助けてくれたの?」
人間の言葉をしゃべっても相手は動物だから僕の言葉なんてわからない。
それなのに、僕は狐に尋ねた。
僕の声を聞いた狐はピクピクと耳を動かし、ルビーの瞳をスッと細めた。まるで僕の言葉を理解しているかのようだ。
(微笑んだような……気がする)
(それにこの狐、すごく可愛い)
耳をヒクヒク動かす狐があまりにも愛らしくて、さっきまでの恐怖を忘れてしまった。
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