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悪夢。(4)

 僕は、可愛らしい狐に向かって微笑む。  ペロリ。  そうしたら、また唇を舐められた。  その時に匂ったのは、薔薇の甘い香り……。 (そっか、この狐……)  (くれない)さんと同じ匂いがする。だからかな、こんな真っ暗闇の世界なのに、全然怖くない。紅さんと同じで、すごく優しい……。 「お前も、優しいんだね……。ありがとう」  僕を受け入れてくれる紅さんも、この狐も……なんて優しいんだろう。  なんて……あたたかなんだろう。 「っつぅう……」  実感すると、目頭が熱くなって、涙が(あふ)れた。  狐は、僕の頬に流れる涙を掬うようにして、舐めてきた。  それがとても心地いい。  僕はクスリと笑って、大きな狐の背中に腕をまわした。

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