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戸惑い。(3)

 だけど途中で綺麗な狐の夢に変わってからは、すごく穏やかな夢にすり替わった。  だから、アレは怖い夢なんかじゃない。 「比良……」 「ぼく……知らない間に、紅さんにしがみついていたみたいで……ごめ、なさい……」  こんなに汚らわしい僕に纏わり付かれて、紅さんはさぞや不快だっただろう。だから一刻も早く、背中にまわしている腕を取り除かなきゃいけない。  いっそのこと、僕の両腕なんか無くなっちゃえばいいのに……。  僕の汚い手が紅さんにしがみついていると思うと、罪悪感でいっぱいになる。 「え? あ……。もしかして、それで泣いているの?」  だけど、紅さんはその場に相応しくない明るい声で、尋ねてきた。 「っひ、っく、ごめ、なさっ!」 (汚い僕がいて、ごめんなさい) 「ごめ、なさ……っふぇ……」 (生きていて、ごめんなさい)  嗚咽(おえつ)を漏らしながら、謝り続けていると……。 「比良……」  ぎゅうううううっ。 「へっ? あ……くれなっ!!」  それは突然だった。  僕の身体が、紅さんに抱きしめられてしまったんだ。  それも痛いくらい、強く――。 「っく、くれないさんっ!?」  しどろもどろになる僕に、紅さんは僕を抱きしめる腕の力を緩めない。 「比良……君って人は、本当に奥ゆかしいんだね。なんて可愛らしいんだろうか……」  紅さんから漂う薔薇の甘い香りが鼻孔を通って脳を刺激していく……。  身体が……。  麻痺して、何も考えられなくなってしまう。

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