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戸惑い。(9)
「実はね、わたしはこの家から少し離れたところでバーを経営しているんだ。少しジャンルは違うけれど、カクテルもジュースも、相性で味が変化するんだ。比良の好みに合ってよかった」
(そっか、紅さんは、バーを経営しているんだ……)
華やかな紅さんにぴったりのお仕事だね。
――えっ?
あれ?
でも待って?
(…………)
今、紅さんは僕の看病をずっとしてくれている。
じゃあ、お仕事は?
もしかして、もしかして……。
僕、紅さんにとてつもない迷惑をかけているんじゃないだろうか。
今さらだけれど紅さんにも私生活がある。
僕が紅さんの生活をグチャグチャにしている……。
自分の愚 かさに気がついた。
そうしたら僕の視線がまたシーツに逆戻りする。
「比良?」
そんな僕を見た紅さんは心配そうに僕を呼ぶ。
その優しさが苦しい。
「ぼく……僕……ごめんなさい」
どうしよう。
どうしよう。
紅さんのことも考えてなかった浅はかな自分。
僕はなんて自分勝手なんだろう。
「……ごめんなさい、ごめんなさ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
(ああ、やっぱり僕はここにいるべきじゃない)
「ごめんなさい。……ごめんなさい」
胸が苦しくて、ひたすら紅さんに謝り続ける。
視界はグニャって歪んでいるし、僕の涙が頬を伝い、白くて綺麗なシーツに落ちていく。
(……ああ、どうしよう)
シーツが汚れる。
だから泣いちゃダメ。
泣いたら汚れる。
そう思うのに、ダメって思うほど悲しみが拍車をかけてくる。
「比良!!」
「……っつ!!」
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