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ふたりの訪問者。(2)
肩くらいまでの、少し長めの黒髪でとても意志が強そうに見える。だけど微笑む目の中には、優しい雰囲気がある。
男の子の方は、とても勝気そう。たぶん、僕とは正反対の性格かな。茶色い、ほわほわした髪の毛は、どことなく紅さんに似ているかもしれない。大きい目と、顔の真ん中に乗った小さな鼻。少し丸みを帯びた輪郭。男の僕から見ても、とても可愛らしいと思う。見方を変えると、女の子と間違われるんじゃないかな? 身長は、僕よりも高い。
やっぱり高校生にしたら僕の身長はとても低いんだろう。
仕方ないよね……僕は今まで、ご飯もろくに口にすることができなかったんだもん。だけどいざ自分と同じくらいの年ごろの男の子を見ると、とても悲しくなる。……なんて、自分の境遇をあらためて振り返っていると、男の子も僕を見てきた。
ぱちっ。僕と男の子の視線が重なる。
「うわっ、さすが紅兄ちゃん……。この子、すごく綺麗だな……」
「えっ?」
聞き間違いだろうか。普段、紅さんにしか言われないような言葉が男の子の口から飛び出た気がする……。
男の子の言葉にしばらく固まっていると、今度は男の人も頷 いた。
「そうだね、とても綺麗だね」
「ありがとう。この子は比良 。今日からよろしくね」
紅さんは、僕の両肩に手を置いて、僕を男の人と男の子の前にズイッと出した。
えっ?
今日から?
よろしく?
それはいったい、どういうことだろう?
そこで男の人が肩にかけている、大きな旅行用の青色の鞄が目に入った。
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