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ふたりの訪問者。(4)
「この子はね、わたしの一番下の弟で、名を、古都 と言うんだ」
えっ?
一番下の……紅さんの弟さん?
そっか、だからか……。
さっき、紅さんにどことなく似てるなって思ったの……。
「比良、ふぉふぉひふはっ!!」
えっと……?
古都くんの自己紹介を紅さんがした後、古都くんはそう言ったけれど口いっぱいにホットケーキを詰め込んでいる所為 で何を言っているのかわからない。リスみたいだ。可愛い。
でも嬉しい。僕が作ったものを美味しそうに食べてくれている。
「古都、食べながらだと、何を言っているのかが分からないよ……」
隣に座っている男の人は、古都くんに微笑みながらそう言った。
目をスッと細めて微笑む男の人は、古都くんにはとても優しい笑顔をするんだ。
とってもあたたかい笑顔だ……。
ふたりがどういう関係なのかはわからないけれど、その笑顔を見ただけで男の人にとって古都くんはとても大切な存在なんだっていうことが理解できる。
古都くんのお友達? それとも親戚の人、なのかな?
……いいな。
古都くんには優しそうな男の人や紅さんみたいなお兄さんがいて……。
こんなふうに大切にしてもらって……。
僕には……。
僕を大切にしてくれるような人はいないから、少し古都くんが羨ましい。
でも、そんなことは思ってはいけないよね。
だって僕は父を見殺しにした汚らわしい存在だから。
紅さんにこうして優しくされているだけでも有り難いって思わなきゃね。
「俺は鏡 幸 。よろしくね、比良くん」
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