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ふたりの訪問者。(6)

 ビクンッ。  耳孔へ直接流れ込んでくる吐息と一緒に入ってきた声に、身体が震えてしてしまう。  さっきとは違った意味で両手に力が入った。 「っ紅さんっ!!」  いくら世話好きだといっても、これは古都くんと鏡さんの前でする話じゃない気がする。  恥ずかしくて……恥ずかしくて……。  恥ずかしい気持ちを追い出すために、目の前にいる古都くんと鏡さんを視界に入れると、ふたりはどうやら僕と紅さんのやり取りは眼中に無いみたいだった。楽しそうに、気ままに話し込でいる。  聞かれなくって良かった。  ホッと息を吐く。  胸を撫で下ろして紅さんを見上げると、優しく微笑む紅さんと視線が絡まった。  たったそれだけのこと。  ――なのに、僕の心臓が大きく跳ねる。 「あ、そうだ。紅さん、頼まれていたもの、持ってきましたよ」  静かだった空間の中で突然告げられた鏡さんの言葉に、僕の心臓がまたドクンと鼓動した。  僕……本当にどうしちゃったんだろう。  紅さんに見惚(みと)れていたなんて!!  バクバクと(うるさ)い心臓を抑えるために着物の裾を掴んでいた手を離し、そっと胸の上に置くと、心臓はものすごい早さで鼓動していた。 「頼まれていたもの?」  この状況をなんとかしたくて気を紛らわすために鏡さんの言葉を復唱する。 「ああ、ありがとう。助かるよ」  紅さんが頷くと、鏡さんは持って来た大きな青色のカバンから紙袋を取り出した。 「はい、比良くんに」 「?」  いったいなんだろう?

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