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ふたりの訪問者。(7)

 鏡さんから差し出された袋を両手で受け取って、紅さんの顔を覗き込む。  この袋、いったい何が入っているんだろう。  見た目よりずっと軽い。  なんだろう?  紙……じゃないみたい。  ごわごわしていて、かさばったモノだ。  紅さんはそんな僕にニッコリ微笑み、「開けてみて」と(うなが)す。  袋から中のものをゆっくり取り出すと、そこには……。  白色の長袖のパーカー数枚と、黒や灰色のハーフパンツ数枚があった。 「比良は古都と同じような身長だし、体格も似ているからね問題ないとは思うんだけれど、ね。どうかな?」  紅さんは、試着してほしいとそう言った。  どうしよう。  ものすごく嬉しい。  ……でも、こんなにしてもらうのはイケないことだ。  だからほころびかけた唇を引き結び、小さく首を横に振った。 「比良?」  嬉しい。  こんなにしてもらって嬉しい。  でも……僕には、これを着る資格は、ない。  汚い僕には……。  人殺しの僕には……。  こんなふうにしてもらう資格はないんだ。  そう自分に言い聞かせると、(まぶた)が熱くなって視界がゆるむ。  この目にたまった涙は嬉しい気持ち。  だけど……。 「僕、これは着られません」 「比良……?」 「すまない、デザインが気に入らなかったかな」  首を振り続ける僕に、鏡さんはそうやって謝ってくる。  違う。  そうじゃないんだ。 「僕には……着る資格なんて、ありません」  紅さんと鏡さんが顔を見合わせ、眉根を寄せている。  僕が……困らせてしまっている。  そう思うと、またいたたまれない罪悪感が僕を襲う。 『気持ち悪い』 『化け物』

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